VW社のEV化方針はディーゼル不正で世界から批判を招いたという反省が背景にあるとみられるが、世界最大の自動車メーカーのEVシフトは、世界の自動車市場のEV化を決定づける可能性がある。

 仏ルノー・日産自動車は2022年までに完全自動運転車を実用化するとともに、販売台数に占めるEV車の比率を3割にする目標を打ち出した。スウェーデンのボルボ・カーは19年以降の新車はすべてEV車にする方針を表明した。EVシフトが鮮明になるなかで、ハイブリッド車での成功体験をもつトヨタ自動車が潮流変化にどこまで対応し、さらに先取りできるかが試されている。

再び追い風受けるEU

 語呂合わせではないが、車の「EVシフト」と世界の「EUシフト」は同時進行している。EUのユンケル欧州委員長は仏ストラスブールの欧州議会での施政方針演説で「EUは再び帆に風を受けている。BREXIT(英国のEU離脱)をチャンスととらえて、団結を強めるべきだ。英国はBREXITを後悔することになるだろう」と胸を張った。ユーロ危機がくすぶり、英国の国民投票でEU離脱が決まった陰鬱な昨年とは様変わりの高揚ぶりだった。

 EUはここ数年危機に見舞われてきた。ユーロ危機はPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)という弱い輪に連鎖した。深刻な連鎖危機はようやく収束したが、ギリシャの債務危機はなお深刻で、イタリアには銀行危機が残っていた。

 欧州各国ではフランス、オランダというEUの原加盟国も含め極右ポピュリズムが台頭した。そこへ英国のEU離脱決定である。排外主義を掲げるトランプ大統領の登場でポピュリズムの連鎖が懸念された。EU域内の移民問題や深刻化する難民問題を背景に、英国に続いてEU離脱のドミノが起きるのではないかと真剣に心配された。

 そうした懸念が払しょくされたのは、フランスで極右の国民戦線、ルペン氏を退けて、若きマクロン大統領が誕生したことが大きかった。BREXITをめぐる英国内の混迷やトランプ米大統領による米国の威信失墜が反面教師になった。さすがに就任当初のマクロン人気は剥げ落ち、支持率低下が目立つが、それは労働市場改革や歳出削減など痛みを伴う措置を相次いで打ち出しているからだ。評価すべき不人気だといえる。

 一方でメルケル独首相は4選を確実にしている。その安定感は欧州屈指であり、世界の指導者にふさわしい。メルケル首相とマクロン大統領の「MMコンビ」による独仏連携を軸に、EUは再生に向けては大きく動き出せる情勢になってきた。