作動する「危機バネ」
EUには「危機バネ」が作動する。ギリシャを震源とするユーロ危機は深刻だったが、それが新たな改革を導き出したのは事実である。ユーロは金融政策は単一でも、財政政策や金融行政は別々という構造問題があった。このユーロの構造問題が露呈し、国家債務危機と金融危機が連鎖することになった。
少なくとも、ユーロ危機の結果、ばらばらだった金融行政は欧州中央銀行(ECB)のもとに一元化されることになった。「銀行同盟」はまだ不十分とはいえ、一歩前進であることは間違いない。
財政統合は国家主権がからむだけに簡単ではないが、論議には火が付いた。トリシェECB前総裁らは「ユーロ圏財務省」構想を提起する。ユーロ共同債の発行も検討課題に浮上している。
英国のEU離脱決定を受けて、再統合に向けた新たな論議が動き出す可能性もある。
ローマ条約60年の転機
EUは2017年、ローマ条約60年の節目で大きな転機を迎える。欧州統合を深化させたEECの創設を決めたローマ条約は歴史的である。2017年3月、EUはこのローマで首脳会議を開き、EUの将来像を提示する段取りである。
2017年は、EUの行方を決める重要な政治日程が目白押しである。春には仏大統領選、秋にはドイツ総選挙がある。ここでEUを前に進められる政治を確立できるかどうかが焦点となる。
難題を抱えながらも、EUは一歩ずつ前に進むだろう。少なくともEU離脱のドミノは起こりえない。第3次世界大戦が起きなかったのは、EUという平和の連合が機能したからである。EUの知恵と粘り強さに着目するときだ。パリの市庁舎の紋章にある「たゆたえども沈まず」は、EUにこそふさわしい言葉である。
「EUは危機を超えられるか ~中東危機と英国離脱~」
【入場無料・事前登録制】
日時:2016年10月31日(月)13:00~17:00
場所:明治大学 駿河台キャンパス グローバルフロント1F
グローバルホール(千代田区神田駿河台1-1)
主催:明治大学 国際総合研究所
後援:日本経済新聞社
■基調講演:「EUと日本」
(ヴィオレル・イスティチョアイア=ブドゥラ欧州連合大使)
開会挨拶 林 良造(明治大学国際総合研究所所長)
【第1部】 英国のEU離脱と欧州の行方
【第2部】 EUと中東 難民問題の背景
【第3部】 ユーロ危機は収束したか
【内容紹介・お申込みページ】
http://www.meiji.ac.jp/miga/news/2016/6t5h7p00000m1zvn.html
※定員になり次第締め切らせていただきます。
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