GAFAの勢いは止まらない。2018年1月29日、ジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)率いる米アマゾンは時価総額1兆ドルを達成(写真=AP/アフロ)

 これまでの産業革命で起きたイノベーションは財やサービスの創造だったが、いま起きているのは1市場を超えた流通業という大産業分類の「総取り」である。

 こうしたIT巨人の行動に世界中で警戒感が強まっている。米議会にもEU委員会にも規制や監視強化の動きがある。とりわけ個人情報の流出でフェイスブックは批判を浴びた。しかし、規制や監視の先を行くIT巨人の独走をとめるのは簡単ではないだろう。

格差が生むポピュリズム

 最大の問題は強権政治と独占経営による資本主義のゆがみが民主主義の後退と相まって複合危機を起こしているところにある。金融資本主義の肥大化とデジタル資本主義の独占化が世界中で格差を拡大させた。人々は「昔は良かった」症候群に陥り、ポピュリズムを台頭させてしまった。

 それはEU全域を覆う。仏独という主要国まで極右ポピュリズムの進出を許している。イタリアには、左右のポピュリズム政権が誕生した。自由な社会だったはずのスウェーデンでも極右が勢力を伸ばした。

 EUには難民問題を抱えるという事情はあるが、ポピュリズムの台頭は世界的な傾向である。中間選挙さなかの米国では、共和党はトランプ大統領という典型的なポピュリストに乗っ取られ、民主党では左派ポピュリストのサンダース氏の影響力が高まっている。

 強権と独占による資本主義と民主主義の複合危機はこれからも続くと考えておかなければならないだろう。

複合危機をどう防ぐか

 金融危機を防ぐのに、それなりの処方箋はある。しかし、資本主義と民主主義の複合危機を防ぐのはたやすくはない。それでも、危機打開に地道に取り組むしかない。

 まず、「言論の自由」にこだわることである。強権政治によるメディアへの介入には徹底して立ち向かうことだ。ヘイトスピーチには法的規制が求められる。偽情報にも規制が必要だ。

 次に、独占禁止法の強化である。とくにデジタル革命に伴う独占化の監視を強化することだ。グローバル経済時代に対応して、独禁当局の国際連携も欠かせない。「グローバル独禁法」の制定を経済協力開発機構(OECD)や世界貿易機関(WTO)などで検討する必要がある。

 個人情報の保護も重要である。ビッグデータ時代だからといって、個人情報がおろそかにされるようでは民主主義の土台が崩れる。EUが打ち出した厳格な基準を国際ルールにすることだ。

 そして、中央銀行の独立性を確保することだ。それは民主主義と資本主義のための基本的なインフラである。政治の介入は防がなければならない。

 格差是正のためには、課税の公平性を維持し所得再配分機能を生かすことが肝心である。グローバル企業の課税逃れを放置してはならない。格差是正には資産課税の強化が必要だ。金融取引税やデジタル課税の導入も真剣に検討するときである。

 リーマンショックからの10年で世界は大きく変わった。それを時代の潮流変化だと、したり顔で受け流すことほど危険なことはない。いま起きているのは、資本主義と民主主義の複合危機なのである。この危機を座視することは許されない。