そうでなくてもトランプ発の貿易戦争は米国自身を含めて世界経済を混乱させている。貿易戦争にからんだ為替介入も市場の波乱要因になる。トランプショックの要因はすでにそろっている。

はびこる強権政治

 世界はいま強権政治に席巻されているようにみえる。強権政治は、批判勢力の存在を許さず、言論の自由を認めない。司法に介入し、中央銀行の独立性も無視する。

 その強権政治が最先進国であるはずの米国のトランプ大統領によって実行されるのだから、世界は混迷する。多国間の自由貿易を否定し、2国間の保護主義に傾斜する。自由な資本主義をゆがめているのは、なんと超大国の大統領である。

 習近平中国国家主席の「反保護主義」の主張がまだまともに聞こえるほどだ。その習近平主席は自らの任期を延長して国家資本主義の体制を強化しようとしている。一帯一路構想には米国顔負けの「中国第一主義」が潜んでいる。

 この米中の強権対立は、貿易戦争を超えて覇権争いに発展している。米中経済冷戦に打開の道はみえていない。

 もともと強権的だったプーチン・ロシア大統領はさらに強権政治に傾斜する恐れがある。ウクライナだけでなく、中東に広がる介入主義は、冷戦期に米国に対抗した旧ソ連がモデルだろう。しかし韓国以下の経済規模しかないロシアが超大国のように振る舞うのは無理がある。資源依存から脱せない経済構造にも問題が多い。プーチン政権がやむを得ず採用する年金の受給開始年齢引き上げには、プーチン支持派まで反旗を翻した。国民生活を犠牲にする拡張主義には限界がある。プーチン人気にもかげりが生じるだろう。

 トルコのエルドアン大統領もクーデター未遂事件が背景にあるだけに、さらに強権政治化に動く可能性がある。しかし「金利を搾取の道具」とみて、中央銀行に利上げを認めない頑迷さには驚く。これでは資本流出は止まらず、通貨危機から抜け出せないだろう。

 問題は、こうして危機が深まれば深まるほど、強権政治家たちは、権力保持のため一層の強権化を目指しかねないところにある。

デジタル革命に「勝者総取り」の危険

 デジタル革命は資本主義の未来を切り開く可能性を秘める。その一方で、「勝者総取り」(ウイナー・テイク・オール)といわれる独占の弊害で資本主義をゆがめる危険をはらんでいる。

 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)の4社にマイクロソフトを加えた「ITビッグ5」は株式の時価総額でも人口知能(AI)、再生可能エネルギーなどへの投資でも他を圧する巨人になった。GAFAの時価総額は英国の国内総生産(GDP)を上回り、研究開発費はフランスの軍事費に匹敵するほどだ。

 こうしたIT独占はデジタル革命そのものの阻害要因になりかねない。新興勢力の頭を抑える存在になることで革新意欲がそがれる。独占企業より新規参入の新興企業の方が収益力や革新力が高いのは経済の常識だ。何より顧客やデータを総取りすることによって世界中で個人の生活にまで踏み込んでくる問題が指摘される。

 さらに、アマゾンなどによるデジタル・流通革命が既存の流通業の存続さえ危うくしている。もちろん、既存の流通業自身の改革が生き残りのカギを握るが、IT巨人が優越的地位を乱用すれば、対応は困難になる。