ハイテク企業などは米議会にドリーマー保護の立法措置を取るよう働きかける構えだ。制度撤廃には米議会内で与党・共和党にも異論があり、米世論を背景に議論は紛糾する可能性がある。トランプ大統領が「米国第一主義」の方針にともなう強硬姿勢を変えないかぎり、米国社会の亀裂と混迷が深まり、ハイテク企業の米国離れを通じて米経済の劣化につながる可能性がある。
排外主義連鎖の危険
問題は「米国第一主義」を掲げるトランプ流排外主義が世界にどう波及するかである。保護主義や移民、難民排斥が世界に連鎖する危険がある。英国の欧州連合(EU)離脱は、移民規制が最大の要因だ。フランス大統領選で移民排斥の極右・国民戦線は失速したが、自国本位主義の芽が完全に摘み取られたわけではない。ドイツのメルケル政権は難民受け入れに度量をみせたが、国内には根強い反発もある。EU内では旧東欧諸国で難民排斥の潮流がむしろ勢いを増している。
トランプ政権が「米国第一主義」のために保護主義に傾斜すれば、その対抗措置として保護主義の連鎖が起こる恐れがある。とくにトランプ政権が2国間主義に基づき2国間の貿易赤字解消のために保護措置を取れば、その対抗措置として、相手国も保護主義に動く恐れが強まる。米中間、米欧間で保護主義の応酬が起きれば、世界貿易は落ち込み、世界経済は停滞することになりかねない。
トランプ大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱しただけでなく、見直し作業が始まった北米自由貿易協定(NAFTA)からも離脱すると脅している。北朝鮮危機のさなかにもかかわらず、米韓自由貿易協定の見直しまで提起している。
こうしたなかで、自由貿易を標ぼうする日本の役割は決定的に重要である。グローバル経済のなかで生きるしかない日本の国益をも左右する。にもかかわらず、その日本に「日本第一主義」がはびこるのは深刻である。
驚くべき「日本ファーストの会」の安易な名付け方
「日本第一主義」の典型といわれても仕方がない事態が、政界再編の台風の目のなかで起きた。東京都で旋風を巻き起こした「都民ファースト」を日本全国に広げる政治勢力にするために誕生した政治団体が何と「日本ファーストの会」と名付けられたのである。
「国民ファースト」と名付けようとしたが、すでに「商標登録」されており、やむなく「日本ファースト」にしたというのが名付け親の弁明である。それにしても「米国第一主義」が批判の的になっているときに、なぜあえてこの名称にしたのか解せない。
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