排外主義の不経済学

 反グローバル主義が行き過ぎれば、いかにその代償が大きくなるかは歴史が証明している。戦前の大不況は、通貨ブロック化と保護主義で深刻化し、第2次世界大戦の導火線に火をつけることになってしまった。

 ましてグローバル化が進展した現代で、保護主義の風潮が広がれば、世界経済は深刻な打撃を受ける。世界貿易の落ち込みの背景にある保護主義の風潮を国際通貨基金(IMF)は警戒している。

カギを握る日本の戦略転換

 こうしたなかで、反グローバル主義の風潮をいかに封じ込めるか。カギを握るのは日本の新たなグローバル戦略である。アベノミクスの第3の矢である成長戦略が起動しないのは、グローバル戦略が欠けているからだろう。まずは「一億総活躍社会」という「日本第一」主義から脱することである。

 「開放なくして成長なし」という原点に戻るしかない。日本の対内直接投資残高の国内総生産(GDP)比は3.7%と米欧諸国やアジア諸国より桁違いに低い。日本は海外からの投資に閉鎖的な国だといわざるをえない。日本企業が海外勢に買収されることに日本社会はあまりに神経質だ。インバウンド消費だけでなく海外企業の活力を取り込んで成長する姿勢に転換しない限り成長戦略は成功しないだろう。

 メガFTA(自由貿易協定)の時代にあって、日本はグローバル戦略しだいで、重要な役割を担える。米大統領選で頓挫しかけているTPPをよみがえらせるため、進んで国会承認をすべきだろう。そのうえでTPPと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を結合するため、扇の要の役割を果たすことだ。英国抜きのEUとの経済連携協定の年内合意は、日EU双方に大きな好機をもたらす。

 メガFTA時代を先導できれば、日本は反グローバル主義を封じ込める立役者になれる位置にいる。日本に求められているのはグローバル戦略の大転換である。



世界経済の新リスク』(ムック)

 BREXIT(ブレグジット、英国のEU離脱)という国民投票結果は、世界中の人々を驚愕させました。
 本書では、英フィナンシャル・タイムズの著名コラムニストのほか、世界的に著名な知識人や各分野の専門家の寄稿はじめ、企業経営者のインタビューや各地の現地リポートなどによって、英離脱で明らかになった新たな経済や政治のリスクについて分析します。
 世界的な低成長と広がる格差、台頭するポピュリスト、そして、為政者に怒りと不満をぶつける労働者たち――。これらがグローバル資本主義に突きつける課題について解き明かす一冊です。

≪主な内容≫
■巻頭インタビュー イアン・ブレマー氏(国際政治学者)
■Chapter1 寄稿 世界の知の巨人が読む 英離脱後の世界
 ジョセフ・スティグリッツ (米コロンビア大学教授)
 ローレンス・サマーズ (米ハーバード大学教授 米元財務長官)
 マーティン・ウルフ (英フィナンシャル・タイムズ チーフ・エコノミクス・コメ ンテーター)
 ほか全7人。
■Chapter2 日本も直撃「失われる」10年
■Chapter3 寄稿 5つの論点で考える?来るべき新たなリスク
 EU:英国分裂とEU再結束につながる国民投票 岡部直明
 ドイツ:強まるEU内の遠心力 ポピュリストを止められるか 熊谷 徹
 金融:日本にも波及しかねない「既知の未知」リスク 倉都康行
 政治:なぜ英国の有権者は「損」な選択を行ったのか 加藤創太
 ほか
■Chapter4 世界を覆う「低成長」の雲
 激震 パナマ文書
 ほか
【発行:日経BP社 定価:907円+税】