危機的状況だからこそ、日欧は自由貿易体制の維持、強化で結束することが求められる。EUが提案している「自動車関税ゼロ」構想は、日米欧が受け入れられるはずだ。
トランプ流保護主義に対抗して、日本とEUが経済連携協定で調印した意義は大きい。その成果を具現化するとともに、政治的意義をトランプ政権にアピールすることだ。
合わせて、2国間の貿易赤字を「損失」と考えるトランプ大統領の思い込みを正す必要がある。日欧連携を軸に国際世論を巻き込むことが肝心だ。
日米FTA避け多国間主義貫け
NAFTAが空中分解の危機にさらされているなかで、試されているのは日本の通商戦略である。北朝鮮問題があるからといって、何から何まで「トランプ追随」になるのは危険である。トランプ政権による鉄鋼、アルミニウムの追加関税に、対抗措置を講じなかった日本は甘くみられても仕方がない。
NAFTAの見直しをトランプ大統領が提起したとき、日本は即座に懸念を表明すべきだった。日本の自動車の供給網が分断されるのを、ここまで座視してきたツケは重い。グローバル経済の相互依存が深まるなかでは、他地域の通商交渉にも、遠慮せず口出しするしかない。
TPP存続だけで満足してはいけない
トランプ大統領が離脱を表明して崩壊寸前になった環太平洋経済連携協定(TPP)を11カ国だけで存続させた意味は大きい。日本の通商戦略の成功例だが、それに満足してはいけない。年内合意に向けて動き出している東アジア地域包括的経済連携(RCEP)との結合をめざすことこそ肝心だ。中国を含むRCEPとTPPが結合することになれば、多国間主義に背を向けるトランプ政権も無視できなくなるはずだ。TPP・RCEP連合に米国を誘い込めば、世界経済を揺るがす米中貿易戦争を緩和することもできる。
間違っても、トランプ大統領が求める日米FTAに足を踏み入れてはならない。日米FTAに応じれば、トランプ政権の圧力に抗しきれなくなるだろう。日本の通商戦略がめざすべきは、2国間主義ではなく、あくまでWTOルールにもとづく多国間主義である。NAFTAをめぐる混迷がそれをはっきり示している。
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