2018年7月11日、ブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)の夕食会で談笑するトランプ米大統領と、エルドアントルコ大統領(右)(写真=ロイター/アフロ)

 強権大統領の経済音痴が危機を増幅している。トルコショックがおさまらないのは、「金利は搾取の道具」と考えるエルドアン大統領が中央銀行を支配して利上げを認めないからである。利上げという通貨防衛の鉄則を無視するのは、経済常識の欠如を示している。

 トルコショックは対外債務を抱える新興国に連鎖する。そのトルコに対して、制裁関税を課したトランプ米大統領もまた無知をさらけ出している。二国間の貿易赤字を「損失」と勘違いし、赤字解消を要求するのは、グローバル経済の相互依存を知らぬ大きな過ちである。こうした強権大統領の経済音痴は、民主主義と資本主義に複合危機をもたらし、世界経済を大きく揺さぶっている。

トルコショックをもたらした利上げ拒否

 強権政治は経済危機を招く。その典型が2016年のクーデター未遂事件以来、強権化を極めたトルコのエルドアン大統領である。強権によって、いっさいの批判を許さず締め付けを強めており、欧州連合(EU)も警戒感を高めてきた。問題は、エルドアン経済政策が独善に陥っていることだ。米欧が金融緩和からの出口戦略に動いているのに、内需刺激をやめなかった。

 なにより、エルドアン大統領は金利引き上げを認めなかった。「金利は搾取の道具」と考える強権大統領がいるかぎり、市場は安心して通貨リラを売り込める。トルコショックのきっかけは、米国との対立だった。トランプ米大統領は、トルコが拘束する米国人牧師の解放を求めて、鉄鋼・アルミニウムの関税を倍増する制裁関税発動を打ち出した。

 しかし、トルコショックの基本的な要因は、強権大統領の経済音痴にあることは間違いない。中央銀行は大統領の完全支配下にある。心配したメルケル独首相が「中央銀行の独立性を確保せよ」と忠告したほどだ。中央銀行は、エルドアン大統領の「金利は搾取」論を忖度して、政策金利は上げられず、なんとか市場金利の利上げ誘導でしのごうとしているが、限界は明らかだ。

 巨額の対外債務を抱え負担が膨らむ民間企業の団体などは、通貨防衛のための利上げを求めるが、封じ込まれている。インフレの進行が経済を危機に陥れ国民生活を圧迫するなかで、トルコ国債は格下げされた。

IMFにも背を向ける

 通常、通貨危機に陥った国は、国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐが、ここでもエルドアン大統領は「政治主権の放棄になる」と自説に固執し、IMF依存を避けている。中南米債務危機やアジア通貨危機で、支援の見返りに厳しい財政緊縮など改革を要求された経緯をみているからだろう。

 IMF依存を避ける代わりに、サウジアラビアとの断交で孤立しているカタールと直接投資などで関係を深め、通貨スワップ協定を結んだ。いかにも付け焼刃だ。独仏などEUからの支援も期待しているが、限界はあるだろう。