排外主義的な「米国第一主義」政策を推し進めてきた、スティーブ・バノン首席戦略官(右端)が8月18日付で解任された。写真は今年1月に撮影されたもの。バノン氏の左のマイケル・フリン氏(前大統領補佐官)もロシア疑惑によりすでに退任している。政権中枢幹部の更迭や退任が続き、トランプ政権内部は混乱している。(写真:ロイター/アフロ)

 「魚は頭から腐る」はロシアの格言だが、この格言がいま最も当てはまるのは、ドナルド・トランプ米大統領だろう。白人至上主義を容認するかのような大統領の発言が米国社会の分断と混乱を招いている。トランプ大統領を支えてきた与党・共和党の幹部や経済界、それに軍幹部にまで大統領批判は広がっている。大統領への助言組織である米製造業評議会と戦略・政策評議会は、経済人の抗議の辞任が相次ぎ、解散せざるをえなかった。そして、「陰の大統領」と呼ばれ、米国第一主義を推し進めた極右、スティーブ・バノン首席戦略官の解任に追い込まれた。トランプ政権がこれを機に人種差別と排外主義から決別しない限り、競争力は削がれ、米国の時代は終わりを告げるだろう。

白人至上主義の本性を露呈

 トランプ大統領の言動からは白人至上主義の本性がみてとれる。奴隷制存続を主張し、人種差別の象徴とされたリー将軍像の撤去をめぐって、白人至上主義団体と人種差別に反対する人々が衝突した。その際、大統領は「双方に責任がある」と述べ、「喧嘩両成敗」の立場を取った。トランプ大統領を誕生させた白人貧困層に配慮したとみられる。

 これが全米の非難を浴びると、一転して、KKK(クー・クラックス・クラン)やネオナチを名指しして白人至上主義者を批判し、火消しにつとめる。ところが、リー将軍像の撤去に「偉大な我が国の歴史や文化が引き裂かれるのは悲しい」と再び人種差別を容認するかのような発言をする。

 さらに「オルト・ライトの定義は何か」と問い「オルト・レフト」もいると反論した。これは極右が反対勢力に反撃する際によく使う常套手段である。一連の発言をつなげるとトランプ大統領の白人至上主義の本性が浮かび上がってくる。

追い込まれてのバノン氏切り

 トランプ大統領の思考法に色濃く影響を及ぼしたのは、バノン氏である。あるいは両氏は共鳴し合っており、一心同体だったのかもしれない。そのバノン氏が解任に追い込まれたのは、人種差別という米国にとって最もセンシティブなテーマを前に、トランプ政権が存続の危機にさらされると大統領自身が感じたからだろう。政権存続のため「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」という心境だったかもしれない。