欧州の核危機救ったオランダ

 バーミンガム・サミットは大国が核の拡散を防げなかった例だが、小国が核の危機を救った例もある。冷戦末期、1980年代、欧州は核の危機に見舞われていた。ソ連はワルシャワ条約機構の東欧諸国に中距離核ミサイル、SS20を配備する。これに対抗して北大西洋条約機構(NATO)加盟の西欧諸国には米核ミサイルが配備されることになった。ジュネーブでの米ソ間の中距離核戦力(INF)交渉も決裂し、欧州を舞台に米ソ緊張が一気に高まった。

 当時、西欧では各国で反核運動が盛り上がっていた。この反核運動はソ連の差し金だったという説もあるが、日本経済新聞のブリュッセル特派員として、この反核運動を取材していて、欧州市民の強い反核意識を肌で感じたものだ。

 西独など主要国に相次いで米核ミサイルを配備するなかで、小国オランダは対応に悩んだ。NATOの決定に従うか、それともオランダの反核機運を受け入れるか。若きルベルス首相にインタビューしたが、首相執務室で頭をかきむしる姿をみた。反核運動の高まりのなかで、ルベルス首相は米ミサイル配備を延期することを決断する。この小国の決断が結局、米ソ核軍縮交渉の再開を導き、冷戦終結への導火線になっていく。

唯一の被爆国・日本が担う地球責任

 唯一の被爆国である日本が担う責任は、欧州の小国の比ではないだろう。被爆国だけが核爆弾が何をもたらすか、その悲惨さを本当に知っているからだ。被爆者の体験を伝え続けるなど、被爆国からの国際発信ほど重要なものはない。広島、長崎を最後に核兵器が一度も使用されなかったのは、被爆国からの発信力がいかに大きかったかを物語っている。それがオバマ大統領の広島訪問に結びついたのである。

 その唯一の被爆国・日本が核兵器禁止条約に参加しないのは、これまでの核廃絶への発信力を自ら減殺するようなものだ。もちろんこの条約には米国など核保有国やNATO諸国など米国の同盟国は不参加だ。米国の「核の傘」に依存する国際政治の現実を浮き彫りにしている。しかし、唯一の被爆国はそれを超える重い地球責任を担っている。

G20首脳の広島訪問を

 唯一の被爆国として、日本外交の基本に、「核兵器なき世界」を据えることが先決だ。「非核3原則(持たず・作らず・持ち込ませず)」の維持は当然である。

 そのうえで、第1に、核超大国である米ロに核軍縮を強く求めることである。安倍晋三首相はトランプ米大統領とも、プーチン・ロシア大統領とも友好関係を築いてきている。近すぎる関係を不安視する見方もあるが、こうした関係こそ生かして米ロ双方に直言すべきである。国際社会を見渡しても米ロ首脳双方に直言できるのは、安倍首相くらいだろう。

 第2に、中国、英国、フランスという他の核保有国にも核軍縮を要求することだ。とくに核増強に動く中国には強く警告するしかない。事実上の核保有国であるインド、パキスタン、イスラエルへの要求も忘れるべきではない。そのうえで、北朝鮮に国際社会と連携して核放棄を突きつけるしかない。

 第3に、2019年に日本で開く20カ国・地域(G20)の首脳会議で、G20首脳の広島訪問を呼び掛けることである。オバマ大統領の広島訪問を実らせた外交成果をもってすれば、実現可能だろう。米ロ中英仏という核保有国すべての首脳が、広島を訪れて初めて、「核兵器なき世界」への道は開かれる。地球を俯瞰する外交の真価が問われる。