北朝鮮の危険な野望と中国の核増強

 核をめぐる差し迫った危険は、北朝鮮の無謀な挑戦であることはいうまでもない。米国にまで到達するという大陸間弾道ミサイルの度重なる実験は、トランプ政権を苛立たせ、国際社会の非難の的になっている。これに核開発が重なれば、北東アジアの緊張を一気に高める。日本は深刻な影響をこうむる恐れがある。日米韓の連携を強めるとともに、国連安保理での制裁強化に取り組むしかないだろう。5日、安保理で石炭などの輸出の抜け穴をふさぐ制裁決議が中ロを含む全会一致で採択されたのは、一歩前進である。

 懸念されるのは、北朝鮮に最大の影響力をもつはずの中国が北朝鮮の核・ミサイル開発に警告しながらも、圧力をかけ渋っているようにみえることだ。北朝鮮の崩壊は避けたいという中国の思惑がうかがえるが、事態を放置すれば、北朝鮮の核・ミサイル開発はエスカレートするばかりだろう。

 問題は、中国の習近平政権自体が海洋進出など軍拡路線に傾斜しているところにある。核増強もその一環とみられる。オバマ前大統領が「核兵器なき世界」を表明して以来、世界中で核軍縮の動きが広がったが、そのなかでも、中国だけは核増強の路線を変えなかった。この核増強を含む中国の軍拡路線は東アジアの緊張を高めることになる。

インド・パキスタン・北朝鮮 ── G8が許した核拡散

 北朝鮮をめぐる危機的状況は、1998年5月が分水嶺になっている。英国バーミンガムで開いたロシアを含むG8の首脳会議(サミット、15~17日)を目前して、インドはG8の姿勢を試すかのように、2度にわたる核実験を実施する。これに対して、G8の声明は「インドおよびその他地域に対し、これ以上の核実験はしないよう求める」と事実上、黙認に近い内容になった。

 このバーミンガム・サミットを取材した経験からみても、G8の態度は生ぬるかった。主催したブレア英首相が会議を早々に切り上げて、ほかの首脳とともにサッカーのテレビ観戦に興じたくらいだから、危機感のなさは明らかだった。

 G8サミットでインドの核実験が黙認されたとみて、隣国で敵対するパキスタンは黙っていなかった。5月末、G8の警告を無視して核実験に踏み切ったのである。

 問題は核拡散の連鎖がここで止まらなかったところにある。パキスタンの国民的英雄であるカーン博士を通じて、核技術が北朝鮮に流出したのである。バーミンガム・サミットの失敗は、核拡散の歴史に汚点として残るものだろう。