財政優等生と財政劣等生

 ドイツを「財政優等生」とするなら、日本は残念ながら「財政劣等生」である。ドイツは財政収支の黒字化をとっくに達成している。ユーロの財政基準は財政赤字の国内総生産(GDP)比が3%以内だから、基準を超えている。ドイツ流の財政規律優先に不満がくすぶるほどだが、ユーロ圏の主要国はドイツにならって財政均衡をめざしている。

 これに対して、日本は基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標をいつまでたっても達成できない。基礎的財政収支は、とりあえず借金と利払いには目をつぶり、稼いだ分で暮らすという考え方だ。本来、短期目標なのに、日本では中長期目標とされてきた。ところが、2020年度の黒字化目標は早くも実現不可能だといわれている。この基礎的財政収支を財政目標にするのは、ユーロ危機の震源地であるギリシャくらいだ。そのギリシャでさえ、黒字化を実現しているのである。

 国と地方の長期債務残高のGDP比をみると、日本は2倍を超え、先進国中最悪である。名目成長率が名目長期金利を上回って上昇し続けないかぎり、債務残高は発散過程に入り、財政危機は深刻化する。

 ところが、日本では「財政ポピュリズム」がはびこっている。ただでさえ国際基準から遠い財政目標をさらに緩めようとしている。教育無償化や教育国債など歳出拡大要求は収まらず、消費税率引き上げをまた先送りしようとしている。こうして大量に発行される国債を日銀が市場経由で購入する事実上の「財政ファイナンス」が定着している。少子高齢社会のもとでの財政ポピュリズムは、日本の将来を危うくする。財政劣等生であるにもかかわらず、政治家にも官僚にも危機感が欠ける。そこにこそ危機の本質がある。

第4次産業革命でも出遅れ

 先端的な製造業と情報技術(IT)を組み合わせる第4次産業革命は、21世紀の産業の帰すうを決める。この新たな産業革命を先導したのは、ドイツだった。これまでの数次の産業革命で、ドイツはむしろ後発組に位置していた。第4次産業革命では、メルケル政権の産業政策とSAPなどIT企業の先駆的な役割が世界をリードした。

 この産業革命の新潮流に日本は大きく出遅れている。ものづくりそのものの競争力に安住し、産業の新たな融合に可能性を見出そうとしなかったのは政策の大きな失敗だった。

 労働市場改革でもドイツの立ち上がりは早かった。英米に比べて労働市場の柔軟性に欠けるのがドイツの弱みだったが、地味なシュレーダー政権の労働市場改革がいまに生きている。ユーロ圏内で最も早く若年失業を防げたのは、伝統的な職業訓練に労働市場改革が加わったからだろう。この労働市場改革でも日本の立ち遅れは大きい。