米国への信認低下がドルの信認を揺るがすのは歴史が証明している。ベトナム戦争やイラク戦争が基軸通貨としてのドルの信認を低下させたのは事実である。

 基軸通貨としてのドルに対抗馬が不在の時代なら、ドルの地位は不変かもしれないが、ライバル通貨が登場すれば、基軸通貨の座も安泰とはいえなくなる。ライバル通貨として登場したユーロは、金融政策がひとつでも財政政策はバラバラという構造的矛盾を抱えて危機に直面した。

 しかし財政統合を中心にユーロ改革が進めば、国際通貨としての存在感を高めるだろう。中国人民元が本物の国際通貨になるには、変動相場制の採用や人民銀行の独立性確保など「国家資本主義」そのものの修正が求められる。相当の時間を要する。それまで中高成長を維持できるかどうかである。

円の戦略を立て直すとき

 通貨戦争が広がれば、ドルとユーロ、人民元だけの問題にはとどまらなくなる。資本流出の危機に直面する新興国は、FRBの利上げに歯止めがかかる事態になれば、小康状態を取り戻すかもしれない。一方で、中国やEU同様、米国との貿易摩擦を抱える日本には円高圧力がかかる可能性がある。事実、トランプ大統領の金利、通貨をめぐる発言を受けて、円相場は上昇に転じた。

 アベノミクスは円安を前提に組み立てられているところに根本的な問題がある。円安・株高に頼り続けるのではなく、円高を生かし経済構造を改革することこそ肝心である。同じ敗戦国で奇跡の復興を遂げた日独にいま大きな差がついたのは、通貨高を望むドイツと通貨安を期待する日本との「通貨観」の落差からきている。

 通貨戦争のなかで、日本は通貨戦略と経済戦略を再構築する必要に迫られている。