問題は、危機の再来を恐れるあまり超緩和からの出口を出るのが遅れてしまったことである。そのひとつの後遺症は、金融資本主義の肥大化だろう。停滞する実物経済との落差は広がった。それが所得格差を広げる大きな要因になったのは間違いない。

 BREXIT、トランプ旋風とポピュリズム(大衆迎合主義)が世界を揺るがしたが、金融資本主義が最も発達した英米発だったことに注目すべきだ。超金融緩和は金融資本主義の肥大化を通じて所得格差を広げ、それがポリュリズムを誘発する一因になったといえるだろう。

アベノミクスの限界示す黒田日銀の立ち往生

 世界が超金融緩和からの出口を探るなかで、アベノミクスの先陣を担わされた黒田東彦日銀総裁による異次元金融緩和は出口論議さえできない状況を続けている。出口戦略をめぐる各国の動きは、一斉利下げを実施したプラザ合意後の協調行動とちょうど逆である。黒田日銀はこの「逆プラザ合意」の埒外に置かれている。

 デフレ脱却のために異次元緩和に踏み切ったが、いつまでたっても2%の物価目標は達成できない。マイナス金利に踏み込んだことでかえって金融機関経営を圧迫するという誤算もあった。出口戦略については議論さえタブー視している。大量の国債購入は事実上の「財政ファイナンス」と受け取られている。先進国最悪の財政赤字国にあって財政規律は緩むばかりである。

 黒田日銀の国際的孤立は、安倍晋三政権によるアベノミクスの限界を浮き彫りにしている。「第3の矢」にすぎなかった成長戦略を「第1の矢」に置き直すとともに、少子高齢化社会にふさわしい財政規律を確保する。そして、各国と足並みをそろえて超金融緩和からの出口戦略を真剣に考えるときがきている。そうでなければ、国際社会から「円安誘導」という疑念が消えないだろう。