トランプ大統領とのぎくしゃくした関係が続くなかで、早くもFRB議長の後任候補が浮上している。米メディアが候補に取り上げたのはコーン氏である。コーン氏と聞いて、すぐ思い浮かんだのは、FRBの生え抜きでグリーンスパンFRB議長を右腕として支え、副議長にまでなったドナルド・コーン氏だった。ところが、FRB議長候補に浮上しているのは、トランプ政権で国家経済会議(NEC)委員長をつとめるゲイリー・コーン氏である。金融市場には通じているが、FRB議長の本流である経済学者やエコノミストではない。金融緩和に逆戻りするのではないかという観測もある。コーン氏がFRB議長に起用されれば、中央銀行であるFRBの独立性や中立性は損なわれ、米国の金融政策の信認が揺らぐ恐れもある。

 こうした様々な観測のなかで、イエレン議長は資産圧縮や追加利上げを通じて、ぶれることなく金融正常化に取り組むことになるだろう。金融政策のフロントランナーとしての矜持に期待するしかない。

BREXITでカーニー総裁の苦しい選択

 カナダ中銀は7年ぶりの利上げに踏み切ったが、カナダ出身のマーク・カーニー・イングランド銀行総裁は出口を前に苦闘している。もともとカーニー総裁は英国のEU離脱は英国経済を苦境に陥れると警告してきた。発言が政治的すぎると、EU離脱派から批判されていたほどだ。BREXITによる英国経済の混迷を想定すれば、金融政策のかじ取りはむずかしくなる。

 英ポンド安で消費者物価上昇率は2%を超えている。主要各国のなかで唯一物価目標を達成している国だ。すぐにでも利上げすべきだが、なかなか踏み切れないのは、BREXITで景気の落ち込みが懸念されるからだ。外資に依存している英国経済は、BREXITによる外資流出の心配がある。輸出に有利なポンド安を超えてポンド危機に陥る恐れがある。最悪のシナリオはスタグフレーション(景気停滞と物価高の同時進行)である。そうなれば、金融政策のかじ取りは至難になる。

 こうした懸念のなかで、カーニー総裁は慎重な利上げによる出口戦略を選択するしかないだろう。

超緩和が格差広げポリュリズムを増幅

 リーマンショック後の超金融緩和は、世界経済危機の打開に避けられない選択だった。危機の蔓延を防ぐうえで、一定の効果があったのは間違いない。しかし、超緩和がめざした物価目標は、BREXITによるポンド安という特殊事情を抱える英国を除いてどの主要先進国も達成していない。超緩和は金融システム不安を防ぐのには役立ったが、実態経済の好転にはなかなかつながらなかった。