とりわけドイツは国内総生産(GDP)の10%もの経常収支の黒字を抱え、トランプ米大統領の批判の的になっている。経常黒字をめぐる米独関係のきしみが、米欧関係全体の亀裂の背景にある。それだけに、メルケル首相にすれば、ECBの政策転換に期待を寄せるわけである。

 もっとも、ECBの緩和縮小は、量的緩和からマイナス金利までドラギ総裁が打ち出した超金融緩和のように、大胆なものにはなりそうにない。逆「ドラギ・マジック」は、なお脆弱なユーロ圏経済への影響や市場の反応を読みながらの慎重なものになるだろう。時には、発言の修正を繰り返しながら、慎重に出口を探ることになるとみられる。

トランプ旋風下のイエレンFRBの戦略

 リーマンショック後の世界の金融緩和からいち早く出口を出たのはFRBである。ベン・バーンナンキ前議長が敷いた路線だが、市場と米国経済の実態をにらみながら、混乱なく実践しているジャネット・イエレン議長の手腕は歴史的にも高く評価されていいだろう。それは、インフレと闘ったポール・ボルカー議長やニューヨーク株暴落による危機を乗り切ったアラン・グリースパン議長らにも並び称されるものだ。

 3回の利上げに続いて膨らんだ資産の縮小に取り掛かるのは、正しい選択だろう。資産圧縮を実施するかわりに、追加利上げには慎重姿勢をのぞかせるのは、政策の選択の幅を広げているようにもみえる。

 そのイエレン議長はしかし、トランプ政権下で試練にさらされている。2018年2月に任期を終える。FRB議長は、20年近くもその座にあったグリーンスパン氏を別にしても、ボルカー氏やバーナンキ氏のように2期8年続けるのが普通である。よほどの事情がないかぎり、1期4年で退任すれば不適格の烙印を押されたことになりかねない。たしかにこの小柄な女性経済学者には、「FRBの巨人」といわれたボルカー氏や「マエストロ」(巨匠)と呼ばれたグリーンスパン氏のようなカリスマ性はない。だが、超緩和からの出口戦略を地道に進めるうえでは、まさに適任といえるだろう。

 そのイエレン議長はトランプ大統領とのケミストリー(化学反応)がまったく合わない。トランプ氏の経済学者嫌いは有名だ。イエレンFRBが利上げに動いているとき、トランプ大統領は「低金利が好きだ」などとけん制していた。トランプ政権が進める金融規制の緩和に、真っ先に反対したのがイエレン議長だった。その金融規制緩和を推し進めるため、トランプ大統領はクオールズ元財務次官をFRB副議長に指名した。