
リーマンショックを受けて超金融緩和を続けてきた世界各国の中央銀行は一斉に金融正常化に動いている。真っ先に出口を出た米連邦準備理事会(FRB)に続いて、ユーロ危機打開を優先してきた欧州中央銀行(ECB)も出口戦略を探り始めた。欧州連合(EU)離脱による混迷のなかでイングランド銀行も出口に向かっている。カナダ中銀は7年ぶりに利上げに踏み切った。一連の動きは、通貨波乱を避けるための「協調行動」にもみえる。このなかで、日銀は超緩和の継続をうたうばかりで、「出口なし」の状態を続けている。出口戦略すら議論できない状況は、アベノミクスの限界を示している。
ECBの逆「ドラギ・マジック」
「デフレの力はインフレの力に置き換わった」。ECBのマリオ・ドラギ総裁のこの発言は、ユーロ危機以来、超金融緩和を続けてきたECBがついにFRBに続いて緩和縮小に動くかと受け止められた。とりわけ、ユーロ危機のなかで登場したドラギ総裁は、危機打開に「何でもする」と大胆な金融緩和に動き「ドラギ・マジック」「スーパー・マリオ」と呼ばれた中央銀行家である。極め付きのハト派と目されるドラギ総裁の変身に、市場は潮の流れの変化を読み取り、ユーロは急上昇した。
その背景にあるのは、ユーロ圏経済の好転である。ギリシャの債務危機やイタリアの金融不安などユーロ危機の芽が完全に消えたわけではないが、ユーロ圏経済そのものは回復基調にある。ドイツのメルケル首相が「ユーロ圏各国の経済はみないい」とことさら強調するのは、金融正常化とユーロ高への期待表明ともいえる。たしかに「ドイツ独り勝ち」とも批判されたユーロ圏経済が足並みをそろえて上向いてきたのは大きな変化だろう。
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