米ロ首脳会談後の記者会見で、プーチン大統領は米ロは核兵器不拡散に特別な責任があるとし、新戦略核兵器削減条約(新START)の延長で連携することが必要だと指摘した。トランプ大統領も核弾頭の9割を米ロが保有しているのは「ばかげている」と述べた。これがうわべの言葉だけか、核軍縮につながるかはなお不透明だ。核軍縮を実効あるものにするなら、トランプ大統領は少なくとも冷戦末期の1987年に署名した中距離核戦力(INF)全廃条約の完全実施をロシアに要求すべきだった。

反トランプでEUと中国が接近

 米ロ首脳会談とほぼ同じころ、北京ではEUのトゥスク大統領とユンケル欧州委員長が李克強首相と会談していた。トランプ大統領の保護主義に対抗して、EUと中国が連携を深めるためだ。中国にとっては、米中貿易戦争がエスカレートするなかで、世界貿易機関(WTO)重視で自由貿易を掲げるEUとの連携は頼みの綱である。米国の鉄鋼、アルミニウムの輸入制限に対抗措置を打ち出しているEUにとっても、輸入制限が自動車に広がれば影響は深刻化するだけに、中国との連携は重要になる。

 そうでなくてもEUと中国の経済関係は深まっている。習近平国家主席が主導する一帯一路構想は欧州を視野に入れている。EU諸国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)に真っ先に加わるなど、第2の経済大国である中国との連携を強化している。

 反トランプ包囲網の形成で、EUと中国は連携をさらに深めることになるだろう。

「EUの敵」になった訪欧

 トランプ大統領の訪欧ではっきりしたのは、欧州各国の抜きがたいトランプ不信である。それは、独仏というEU主要国からEU離脱の英国まで、欧州各国全体に共通している。「猫を猫とは言わない」のがフランス流の洗練された外交といわれるが、トランプ流は非礼で露骨な言葉の羅列である。思わず眉をひそめたくなる言動ばかりだ。国際政治や経済学の基礎的知識の欠如にも驚く。

 問題は、それが「米国第一主義」ではなく「トランプ第一主義」に陥っている点にある。本当の国益にもとづく「自国本位主義」なら、保護主義による世界経済への影響にも目を配らなければならないはずだ。そうであれば、同盟関係を重視し国際協調をめざすことになるだろう。しかし、目先の選挙ばかり考える「自分本位主義」なら話は別である。選挙地盤の喝采ばかりを優先することになる。

 トランプ大統領はEUを「敵」と捉えたが、これに対してEUはトランプ大統領を「EUの敵」とみるようになっている。不信の連鎖が混迷する世界をさらに不透明にする危険がある。