そのうえにトランプ大統領は、BREXITでEUを提訴せよとメイ首相に持ちかけたという。そこにはEUが結束するより解体することを暗に期待するトランプ流の思考法がある。結束して貿易戦争に臨めば手ごわいが、2国間関係なら与しやすいと考えているのだろう。

「ロシアゲート隠し」の米ロ会談

 8年ぶりの米ロ首脳会談はフィンランドの首都ヘルシンキで開かれた。ヘルシンキは米ソ冷戦時代、東西融和の歴史的舞台になってきたが、いまフィンランドは皮肉にもトランプ大統領が「敵」と考えるEUの一員である。しかもユーロ圏に属し先端技術をもつ先進国である。

 なぜいま米ロ会談を開くのか様々な疑問があったが、わかりやすい答えは「ロシアゲート隠し」だろう。モラー米特別検察官は2016年の米大統領選に介入したとしてロシア軍当局者12人の起訴に踏み切ったばかりである。

 プーチン大統領が選挙介入疑惑を完全否定しただけでなく、トランプ大統領もこれに同意して、疑惑封じ込めに共同戦線を張った。米ロ首脳の「共通の利益」であるからだ。

クリミア併合黙認か

 米欧とロシアとの対立が深まったのは、2014年ロシアがクリミアを併合しウクライナ東部に軍事介入したためである。これを受けて米欧の対ロ経済制裁はいまも続いている。

 しかし、トランプ大統領はこの首脳会談を「米ロ関係の分岐点になる」と位置付けている。かねてクリミア併合を容認する発言を繰り返してきたトランプ大統領がクリミア併合を黙認する場になった可能性がある。

 もともとクリミアはロシアの一部だったが、旧ソ連のフルシチョフ時代にウクライナに編入されたいきさつがある。プーチン政権に批判的なゴルバチョフ元大統領でさえクリミア併合には理解を示している。

 しかし、勝手に領土を書き換える行為が認められるなら国際的道義は成り立たない。しかも、ウクライナの親EU路線に、プーチン政権は介入姿勢を強めている。そこには、EUが大欧州化で吸引力を強め、それが旧東欧圏から隣国ウクライナにまで及んできたことに対するプーチン大領領の強い危機感がある。

 こうしたなかでのトランプ大統領の方針転換はこれまでの同盟関係を逆転させ、EUとロシアのせめぎ合いのなかで、ロシアを一方的に利することになりかねない。

米ロ核軍縮は進むのか

 米ロ首脳会談に歴史的意義を見出そうするなら、それは米ロ間の核軍縮交渉が進むかどうかである。米朝首脳会談では「朝鮮半島の完全な非核化」で合意したものの、完全な核廃棄へのプロセスはみえていない。肝心なのは、この朝鮮半島の非核化を「核兵器なき世界」に結び付けられるかどうかである。

 ところが米ロはむしろ核軍拡競争に動こうとしている。トランプ政権が小型核兵器の開発など核増強に動き、プーチン政権もこれに対抗する構えを示してきた。