2018年7月16日、ロシアのプーチン大統領(右)とフィンランドのヘルシンキで会談し、握手するトランプ米大統領(写真=AP/アフロ)

 これは「米国第一主義」どころか選挙目当ての「トランプ第一主義」というべきだろう。米欧の亀裂は、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を経て、貿易から安全保障に拡大した。トランプ米大統領は欧州連合(EU)を「敵」とまで言った。その一方で、米ロ首脳会談では、ロシアの米大統領選挙への介入疑惑をまるで口裏を合わせたように否定してみせ、米ロ接近ぶりを鮮明にした。ロシアのクリミア併合も黙認された形だ。米欧亀裂と米ロ接近を中心に、トランプ流の自分本位主義外交が第2次大戦後の世界秩序を大きく崩し始めている。

米欧亀裂は貿易から安保へ

 トランプ米大統領の登場とともに、きしみ続けている米欧関係の亀裂は決定的な段階を迎えている。地球温暖化防止のためのパリ協定からの離脱、イラン核合意からの離脱、保護主義の発動など、米欧関係は緊張してきたが、ついに米欧関係の核にあるNATOの運営に亀裂が走った。

 ブリュッセルで開いたNATOの首脳会議では、カナダの7カ国(G7)首脳会議のように宣言を拒否するといった「ちゃぶ台返し」はなかったが、米国と欧州各国のズレは大きかった。トランプ大統領はNATO離脱をちらつかせながら、国防費を国内総生産(GDP)比で米国並みの4%に引き上げるよう要求した。NATOの共通目標である同2%でさえ達成されていないのに、無茶な要求である。

 トランプ大統領は結局、当初要求にはこだわらず、欧州側が2%目標に達成をめざすという従来方針を確認して声明に盛り込むことでことなきを得たが、問題の根の深さを浮き彫りにした。

 トランプ大統領が目の敵にしているのは、独り勝ちを続けてきたEUの盟主ドイツである。メルケル首相との波長は全く合わず、ドイツがロシアからエネルギー供給を受けていることを取り上げて「ロシアの人質」とまで言い放った。

 そもそもドイツがEU内で信認を得てきたのは、第2次大戦の苦い教訓から決して軍事大国の道を歩まないという方針を鮮明にしているからだ。核兵器は保有せず、軍事面ではフランス、英国の前に出ず、応分の負担にとどめる姿勢を貫いてきている。その結果がGDP比で1・1%という国防費の規模になっている。

 何よりEU諸国は、財政規律を重視する義務を負っており、国防費といっても聖域扱いできない。国防費負担をめぐる米欧の亀裂は簡単には修復できず、NATOの運営は厳しさを増すだろう。

EUを「敵」とみるトランプ

 今回の訪欧で、トランプ大統領の本音が出たのは、「EUは敵だ」という言葉である。こう言った後に、「ロシアも中国も敵」と付け加えたが、本心からEUを敵視しているようにみえる。

 その証拠に英国のEU離脱(BREXIT)を歓迎してきた。それもジョンソン前外相らが主張してきた強硬離脱を推してきた。メイ英首相がEUとの自由貿易圏形成などソフト離脱路線を打ち出すと、これに異を唱え「米英協定の機会をつぶす」と警告した。結局、米英協定は結ぶことにしたが、辞任したジョンソン氏を「偉大な首相になる資質が備わっている」とあえて持ち上げた。露骨ともいえる内政干渉である。