メイ政権のソフト離脱には経済への影響を最小限に食い止めたいという思いがにじんでいるが、外資はオウンゴールを繰り返す不透明な英国に投資を見合わせるだろう。それどころか英国から欧州大陸などEUへの移転を検討せざるをえなくなる。エアバスといったEUの共同事業からも英国は外される。

 世界の金融センターとしてのロンドン・シティーの座も盤石ではなくなる。シティーが担ってきたユーロ・ビジネスは欧州大陸に移される。米国の金融機関はシティーからフランクフルト、パリなど欧州大陸への機能分散を急いでいる。こうした機能分散は日本の金融機関どころか英国の金融機関にも波及している。

 外資流出が収まらなければ、戦後の英国経済を襲ったポンド危機が再現しかねない。緩やかなポンド安なら輸出や観光には好都合だが、ポンド危機になれば話は別である。スタグフレーション(物価高と景気停滞の同時進行)に陥り、再び英国病に悩まされることになる。

BRETURNの動き再燃も

 英国のEU離脱期限は、2019年3月29日である。英国とEU各国の議会承認手続きを考えれば、離脱のためEUとの最終合意は10月のEU首脳会議までに成立しなればならない。日程が切迫するなかでの英国政治の混迷は、BREXITをめぐる混迷を象徴している。

 弱体化したメイ政権は「ゾンビ内閣」とやゆされるほど機能不全に陥っている。保守党内に倒閣の動きもあるが、代わりがいないという弱みもある。このまま弱体政権がEUとの詰めの交渉に当たれば、相当の譲歩を迫られるだろう。英国内の反発を恐れて譲歩を拒めば、時間切れで何も決まらないまま「無秩序離脱」という最悪の事態になりかねない。2020年末まではEUの単一市場や関税同盟に残すという暫定合意も宙に浮く恐れがある。離脱期限そのものを先送りする手もないわけではないが、議会手続など条件が多く、不透明感から急激な外資流出を招くだけだろう。

 こうしたなかでは、英国内ではBRETURN(EUへの回帰)を求める議論が若者を中心にロンドンやスコットランドで巻き起こる可能性もある。再度の国民投票や再選挙が選択肢になる。英国は歴史的大失敗にこのまま身を任せるか、深い崖の淵で思いとどまるかの選択を迫られようとしている。