野球の米大リーグでは米国とカナダはひとつである。しかしカナダのトルドー政権は、反トランプの姿勢を鮮明にしている。さきの主要7カ国(G7)首脳会議では、ようやくまとめた共同声明をトランプ大統領にちゃぶ台返しされた。鉄鋼、アルミニウムの輸入制限には報復措置に打って出た。米国にとってもっとも近い同盟国だったはずのカナダはいまや「EUの飛び地」のような存在になっている。

 メキシコには「メキシコ第一」を掲げる左派ポピュリズム(大衆迎合主義)のロペスオブラドール大統領が誕生する。「米国第一」と「メキシコ第一」が折り合えるはずはない。米墨対立はこれまで以上に深刻化するだろう。米墨間のあつれきは、米市場に照準を合わせてメキシコに進出した日本企業などに大きな影響を及ぼしかねない。

トランプ暴走で失われた信認

 トランプ大統領の暴走で最大の敗者は米国自身である。米国経済が貿易戦争の返り血を浴びるのは目にみえている。経済界も遅ればせながらトランプ発の貿易戦争に反対の声をあげ始めた。全米商工会議所は「米企業や消費者に影響を及ぼす」と警告した。トランプ大統領は11月の中間選挙に照準を合わせているが、貿易戦争が収まらなければ、トランプ支持層にも賃下げなど打撃が及ぶのは必至である。

 何より、超大国としての米国の信認が失われている。このままトランプ暴走が続けば、「米国の時代」は終わりを告げる。米国が戦後の見取り図を自ら描いたブレトンウッズ会議から74年、トランプ大統領は自ら戦後体制に幕を引こうとしているようにみえる。

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