それは米欧同盟そのものを揺るがすことになる。EU首脳の間には、パリ協定、イラン核合意からの離脱や主要国首脳会議(サミット)軽視など、とどまるところのないトランプ暴走に、不信感が強まっている。それは国際安全保障の要である北大西洋条約機構(NATO)の運営にも響くだろう。そうなれば、ポーランドに続いて、バルト3国、中東などを視野に入れるロシアの進出を許すことになりかねない。

米中覇権争いで中国に追い風

 最大の焦点である米中貿易戦争には、ハイテク覇権争いがからむだけに深刻である。知的財産権の侵害を理由にトランプ政権は高関税を発動する方針で、これに対して中国は報復関税の発動に踏み切る構えである。米中貿易戦争は投資を含めで拡大する危険もある。世界第1、第2の経済大国どうしの経済戦争が世界経済全体を巻き込む恐れが強まってくる。

 問題は、この米中覇権争いでは中国に追い風が吹いている点である。世界を相手にするトランプ発の貿易戦争のなかで、中国の知的財産権問題という日米欧先進国の「共通の課題」がかすんでしまっている。本来、日米欧は足並みをそろえて知的財産権問題で中国に改善要求を突きつけるべきところである。

 ところが、鉄鋼、アルミニウムから自動車にまで拡大しようというトランプ流の保護貿易主義で、世界には中国とEUの連携を中心に「反トランプ包囲網」を形成しようという潮流がある。それが米中のハイテク覇権争いで中国を相対的に有利な立場に立たせる結果になっている。

 もちろん、「国家資本主義」の中国がグローバル経済を支配しようという野望には大きな問題がある。習近平国家主席は「一帯一路」構想で中国にとっての市場を拡大するとともに、「中国製造2025」によって先端分野での日米欧へのキャッチアップをめざしている。国家が主導する重点10分野には、次世代情報技術、高度なデジタル制御の工作機械・ロボット、省エネ・新エネ自動車、バイオ医療・高性能医療機械などが含まれる。

 こうした「あからさまな国家資本主義」に「あからさまな保護主義」で対抗しようというトランプ流には、説得力がない。なにしろ中国は保護主義に反対し、自由貿易の旗手をめざしている。それはトランプ暴走の弊害を際立たせている。

加墨との対立が招く米の孤立

 米国にとって深刻なのは、近隣のカナダ、メキシコとの対立が深まっていることだ。NAFTA見直しやメキシコとの国境の壁建設が始まりだが、問題はそれにとどまらない。