「Make our planet great again」(地球を再びに偉大に)と強調した。トランプ大統領の口癖である「Make America great again」(米国を再び偉大に)をこう切り返したのである。トランプ大統領が「地球の敵」であることを世界に知らしめたのである。そのうえで、再交渉を求めるトランプ大統領の指摘を「プランBはない」と切って捨てた。

 トランプ大統領の国際合意からの離脱はなおも続く。米ロ中英仏の国連安保理常任理事国とドイツの6カ国によるイランとの核合意を破棄しようとしている。また、オバマ政権がキューバとせっかく国交回復したのに、再び経済制裁を強化しようとしている。

 オバマ前政権の国際的な功績をことごとくくつがえすトランプ流は国際社会から批判の的になっている。批判の先頭に立つのがメルケル首相とともにマクロン大統領といっていいい。メルケル首相はトランプ流に業を煮やして「他国に頼れない時代になった」と強調したが、それはEU内でのマクロン大統領との強い連携が前提である。

 トランプ流には飲み込まれないという強い決意の表れが、マクロン大統領の力強い握手である。トランプ大統領の握手を強く握り返してなかなか離さなかった。70歳と39歳の握力の差は歴然としていた。ちなみに、メルケル首相が初会談で握手を求めたのに、トランプ大統領は応じなかった。マクロン大統領がみせた若さと力強さは、国際社会のリーダーとして大きな武器になるはずだ。

ジスカールデスタンの再来

 マクロン大統領は、欧州と世界をリードしたジスカールデスタン大統領をほうふつさせる。左右を糾合した中道政権という政権の性格がまず似ている。46歳の若さで大統領になったジスカールデスタンに対して、マクロンは史上最年少39歳である。なによりともに経済政策に精通している。とくに、マクロン大統領は金融と成長戦略に強く、企業マインドにも理解が深い。閣僚の評価も企業の人事評価を取り入れているくらいである。

 そして、ともに欧州統合に熱意をもっている。その大前提は強力な仏独連携である。ジスカールデスタン大統領はシュミット西独首相と組んで、ユーロの前身である欧州通貨制度(EMS)を創設した。ブレトンウッズ体制の崩壊で、国際通貨が混迷するなかで、欧州の通貨安定が欧州統合の土台になると考えたからだ。マクロン大統領がめざすのは、ユーロの再生である。

 石油危機に対応して、先進国首脳会議(サミット)を創設したのもジスカールデスタン・シュミットのコンビだった。第1回のサミットはフランスのランブイエで開かれた。マクロン大統領はG7(7カ国)の主要国首脳会議で早くも存在感を見せ始めている。

 ドイツのメルケル首相と組む仏独連携は、世界をリードしたジスカールデスタン・シュミット時代を思い起こさせる。

ソフトパワーはEUシフト

 マクロン仏大統領の登場は、欧州と世界の光景を一変させた。BREXIT、トランプ旋風と続いた英米発の国際リスクの連鎖をフランスが食い止めたのはたしかだろう。そこにはマクロンを選んだフランス国民の成熟度と底力を感じる。

 EUはユーロ危機や難民危機で危機の時代を続けてきたが、マクロン政権の誕生で再生への可能性を開いた意味は大きい。さらに、覇権国家だったはずの英米が自らソフトパワーを失うなかで、ソフトパワー・バランスは明らかに「EUシフト」し始めている。安倍晋三政権もこのEUシフトへの潮流変化を読んで、経済連携協定の早期合意などEUとの連携を強めるときがきている。