
英国の総選挙で与党・保守党は過半数を割り込み、事実上、敗北した。議会で圧倒的多数を得て、欧州連合(EU)離脱交渉を有利に進めようというテリーザ・メイ首相の総選挙前倒しは大失敗に終わった。1年前、EU残留を固めるためのキャメロン前首相による国民投票実施は裏目に出たが、それに続く2度目の「オウンゴール」(自殺点)という見方がある。
メイ政権は北アイルランドの地域政党との閣外協力で事態を打開しようとしているが、首相の信認失墜による政治の混乱は避けられそうにない。「ハード離脱」路線の修正も含めてBREXITは混迷する恐れがある。
「メイ・フェア・レディ」は失敗物語
オードリー・ヘップバーンとレックス・ハリソン主演の映画「マイ・フェア・レディ」(My Fair Lady)は貧しい花売り娘から貴婦人への大変身の物語である。下町言葉のコックニーなまりが抜け切れず、ロンドンの高級住宅地「メイフェア―」(Mayfair)を「マイフェア」と発音してしまう。それをもじって、「マイ・フェア・レディ」の題名になったといわれる。「マイ・フェア・レディ」は成功物語だが、美しいクィーンズ・イングリッシュをしゃべるメイ首相の「メイ・フェア・レディ」(May Fair Lady)は失敗物語だった。
なぜメイ首相は失敗したか。2020年に予定されていた総選挙の前倒しをあえて実施するには、確かな勝算がなければならなかったはずだ。当初は、不人気を極めたコービン党首のもと落ち目の労働党に大差をつける世論調査がほとんどだった。しかし、楽勝と読んで、社会保障費削減など高齢層に響く国内政策を打ち出したのが裏目に出た。党内の調整より側近のアドバイザーの判断を取り入れたマニフェストを採用する。このマニュフェストで民意は離れていく。逆に、労働党は財政緊縮からの離脱を訴えて、票をかせいだ。
それに、マンチェスター、ロンドンと相次ぐテロで、メイ首相は内相時代の警察官削減の責任を問われた。
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