安倍首相は国会での党首討論で、トランプ流保護主義が鉄鋼、アルミから自動車にまで拡大しようとしていることについて「全ての貿易行為はWTOと整合的でないといけない」と述べ、批判した。

 日本としては、この批判を7日のトランプ大統領との首脳会談で直接、ぶつけるしかない。首脳会談は米朝首脳会談の準備のためにだけあるのではない。同盟国の首脳としての「友情ある説得」が求められる場面だ。G7各国首脳も日本の経済界も安倍首相がトランプ大統領に直言できるかどうか注視している。

地に落ちる超大国の信認

 トランプ発の貿易戦争で最大の敗者になるのは、中国でも欧州でも日本でもない。保護主義を世界にまき散らした当の米国である。世界が報復合戦による貿易戦争に陥れば、世界経済全体の足を引っ張ることになる。とりわけサプライ・チェーンなどグローバル・ネットワークが高関税で分断されてしまう危険がある。

 その打撃を最も大きくこうむるのは、グローバル経済の核にある米国経済そのものだ。それは米国の消費者と雇用を直撃することになる。世界の先頭を切って出口戦略に動いている米連邦準備理事会(FRB)の政策運営を難しくする。対応を誤れば、リーマンショック10年後の世界の市場を再び揺さぶることにもなりかねない。

 米国にとって経済への打撃以上に大きいのは、信認の失墜である。保護主義の張本人という汚名は永遠に消えることはない。保護主義を防ぎ、自由貿易の先頭に立つべき超大国・米国が保護主義の先頭に立つのは、異常としか言いようがない。

 超大国・米国が信認を喪失する一方で、第2の経済大国・中国の台頭を許すことにもなる。事実、習近平政権は保護主義を防ぎ、自由貿易を推進すると声高に主張し始めている。国家資本主義の中国に、米国が自由貿易の盟主の座を取って代わられるとすれば、大いなる歴史の皮肉というべきだろう。

多国間主義の連携でトランプ封じを

 トランプ発の貿易戦争を防ぐには、多国間主義の連携によって、トランプ封じをめざすしかないだろう。超大国の暴走は単独では防げない。世界経済に影響力をもつ日欧中の連携が欠かせない。

 まず「米国第一主義」の矛盾を突くことである。トランプ大統領が主張する「米国第一主義」は、グローバル経済の現実から大きくかけ離れている。「米国第一」と考えて打ち出す保護主義は結局、米国経済を痛めつけることになる。

 「貿易赤字は損失」という考え方で保護措置を取るのは大きな誤りである。グローバル経済の相互依存が深まるなかで、2国間の貿易赤字を対象にするのは意味がない。こうした経済学の基礎的知識すら持ち合わせない政権がいまなお存続しているのは驚きである。

 何事も2国間主義で解決しようとするのは、結局、米国のごり押しを許すことになる。トランプ流2国間主義を多国間主義に引き戻すうえで、日欧中の連携が決定的に重要になる。まず、環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を結合し、米国に参加を呼び掛ける。そして日EU経済連携協定をできるだけ早く実効あるものにする。多国間主義の複層的連携がいかに世界経済を活性化させるかを実証することである。

 多国間主義の連携で、要の役割を担っているのは日本である。日本の多角的な外交力が試されている。