貿易戦争を仕掛ける米国のトランプ大統領。だがリスクは自国に跳ね返る(写真:AP/アフロ)

 貿易戦争に勝者はいない。しかし、はっきりしているのは、世界中を相手にトランプ発の貿易戦争を仕掛けた米国が「最大の敗者」になることだ。トランプ政権は、鉄鋼・アルミニウムに高関税を課す輸入制限を一時猶予していた欧州連合(EU)、カナダ、メキシコにも拡大した。高関税を自動車にまで課すことも検討している。これに対して、主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議は6カ国がトランプ政権の保護主義に集中砲火を浴びせ、米国は孤立に追い込まれた。

 世界最大の経済大国の保護主義による貿易戦争は、世界経済に大きな打撃を及ぼす。それは米国経済を直撃するだけでなく、超大国の信認を失墜させる。貿易赤字を2国間で解消しようする誤った思考は、トランプ政権の反経済学の姿勢を世界に露呈している。

G7で米に集中砲火

 カナダ西部のウィスラーで開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議は、異例づくめの会合になった。本来、世界経済や金融・通貨情勢について話し合う会議だが、議論は貿易問題に絞られた。アルゼンチンの通貨安、イタリアやスペインの政治混乱による南欧リスクなど緊急課題は素通りし、トランプ政権の保護主義に批判が集中した。

 トランプ政権が鉄鋼・アルミの輸入制限をEUと北米自由貿易協定(NAFTA)を構成するカナダ、メキシコに拡大し、これらの国・地域が報復措置を打ち出すことになったばかりだ。このトランプ発の貿易戦争の拡大は、世界経済に影響するだけに、G7財務相・中央銀行総裁会議でも最重要の討議テーマにせざるをえなかった。共同声明は出されなかったものの、議長声明で米国を名指しで批判したのも異例である。

 最も強く反発したのは、NAFTA再交渉中のカナダだった。モルノー財務相は「米国の考え方はばかげている」とまで述べた。鉄鋼生産の4割強が対米輸出だけに、直接的影響が大きい。対米批判の先鋒役を担ったのは当然である。フランスのルメール経済・財政相が「世界経済に危険な結果をもたらす」と警告すれば、ドイツのショルツ財務相は「国際法違反だ」と批判した。

 安倍・トランプの蜜月関係からトランプ政権には遠慮がちの日本もさすがにこの国際潮流に乗り遅れるわけにはいかなかった。麻生財務相も「一方的な保護主義的措置はどの国の利益にもならない」と警告の列に加わった。