とくに、欧州首脳はEU諸国で台頭した反EUの極右ポピュリズム(大衆迎合主義)とトランプ大統領との共通項をみてとっている。トランプ大統領が仏大統領選で国民戦線のルペン候補を支持するともみえる言動をしたことで警戒感は強まった。トランプ旋風を反面教師にしたおかげで、極右ポピュリズムの伸びは鈍ってはいるが、いつ頭をもたげてもおかしくない状況である。それだけに、EU諸国はトランプ政権に一定の距離を置くスタンスを取り続けるだろう。
G7のリーダーは独仏に戻る
今回のG7サミットを通じてはっきりしたのは、米国主導の時代の終わりである。先進国首脳会議は、第1次石油危機後の世界経済を立て直すため、ジスカールデスタン仏大統領とシュミット西独首相の提唱によって1975年に設けられた。それを引き継ぐG7サミットは42年ぶりに原点に戻る可能性がある。
メルケル独首相はすでに世界で最も賢明なリーダーと目されているが、39歳のマクロン仏大統領にもG7のリーダーになる資質がある。投資銀行家の経験や経済相の実績から金融と成長戦略の両方に通じたG7唯一の首脳である。世界経済が危機に見舞われたときに、その手腕を発揮することが期待される。マクロン氏は反ルペンの消去法で登場したという見方もあるが、その潜在力は大きいとみるべきだ。
もちろん、左右両派を糾合する政権基盤を固めることが先決だが、メルケル首相との独仏連携をよみがえらせれば、G7で大きな指導力を発揮できるだろう。
「悪役」とは間合いが重要
「悪役」とどう付き合うかはむずかしい。緊迫する北朝鮮問題を考えれば、日米同盟は決定的に重要であり、日米韓の結束で北朝鮮に影響力がある中国に働きかけるしかない。その一方で、排外主義のトランプ政権をまるごと受けいれるのは危険である。保護主義の防止を嫌がられるくらい説くことが肝心だ。安倍晋三首相はTPPへの復帰を求めるだけでなく、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)との結合をめざすことだ。日本企業に直接響くNAFTA見直しにも注文をつける必要がある。グローバル経済時代に2国間主義に戻るのはいかに危険な選択かを説得するしかない。
京都議定書の当事国である環境先進国として、米国がパリ協定から離脱するのは何としても防がなければならない。「環境」こそ成長戦略であることを説くことである。
欧州諸国との連携も深める必要がある。日EUの経済連携協定の締結を急ぎ、保護主義防止の成果をみせなければならない。
「悪役」と必要以上に近すぎるのは、かえって国際社会の不信を招きかねない。米国は日本にとって最も大事な国だが、いまのトランプ政権にはあまりに問題が多い。「悪役」とは間合いが重要である。
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