トランプ大統領の登場以来、G20を含めすべての国際会議で反故にされてきた「保護主義との闘い」という基本的な文言を、今回のG7サミットでかろうじて「復活」させることができた。サミットでのトランプ包囲網の成果ではある。しかし、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)見直しなどにみられるように、「米国第一主義」の岩盤には変化はないだろう。

地球温暖化防止で孤立

 深刻なのは、トランプ大統領が地球温暖化防止のためのパリ協定に背を向けていることだ。もともと「地球温暖化はまやかしだ」という米国の一部にある誤った風潮に乗って大統領選を勝ち抜いてきただけに、トランプ大統領を変心させるのは簡単ではない。とくに地盤である石炭産業の規制緩和もからんでいるだけに問題の根は深い。

 パリ協定はこれ以上の地球温暖化を防ぐためにようやく国際合意できた最後の危機打開策といえる。パリ協定が実施されなければ、地球危機は「不都合な真実」(ゴア米元副大統領)を超える危険がある。

 しかも、パリ協定の意義があるのは、京都議定書には加わっていない米国と中国が主導した点である。温暖化ガス排出量1、2位の米中が主導した国際合意は、大きな進展だった。その米国がパリ協定から離脱する事態になれば、協定そのものの形骸化が懸念される。

 パリの同時テロの直後にもかかわらず、協定をまとめあげたのはフランスの尽力である。オランド大統領を引き継いだマクロン大統領がトランプ説得の先頭に立ったのは当然だろう。経済への影響を懸念するトランプ大統領に対して、「温暖化防止策は雇用創出につながる」と懸命に説いた。

 トランプ大統領が「米国第一主義」から「地球第一主義」にならないかぎり、地球危機は深刻化するばかりである。それは地球温暖化の被害をまともに受けている途上国を巻き込み、米国自身にも跳ね返ってくるだろう。

難民危機にも背を向ける

 G7サミットでは、直面する難民危機でも大きな溝があった。トランプ大統領は議長国イタリアが求めた難民保護のための特別声明にも反対したが、どうにかサミット宣言の一部に取り込まれた。

 移民排斥、難民の一時受け入れ停止などトランプ大統領の排外主義は、内外の反発を浴びた。米国の司法当局によって待ったをかけられているが、トランプ政権の姿勢はなお強硬だ。移民、難民問題に苦しみながらも、その対応を模索する欧州諸国との差は埋まらなかった。

極右台頭からむ米欧の亀裂

 G7サミットで米欧の亀裂が鮮明になったのは、欧州諸国がトランプ米政権の本質を見抜いているからだろう。国境に壁をつくろうとするトランプ大統領の姿勢は、「壁ではなく橋をつくる」(ユンケルEU委員長)というEUの基本から大きく外れる。

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