EUの原加盟国のなかで「イタリアはずし」を進めようという構想である。これに怒ったイタリア政府はドイツが求める国連安全保障理事会の常任理事国入りに反対する方針を示したほどだ。そんな経緯を経て、イタリアはやっとユーロの創設メンバーになれたのである。

 そのイタリアが、ギリシャに端を発するユーロ危機ではPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)と呼ばれる弱い輪の一角になってしまう。さらに、イタリアが放漫財政に傾斜する事態になれば、イタリアの危機がユーロ圏の危機、さらにはEUの危機に連鎖する危険も出かねない。

EUの新たな波乱要因に

 EUはただでさえ難題に直面している。英国のEU離脱だけではない。EU主要国のなかでもフランスの「国民戦線」、ドイツの「ドイツ人のための選択肢」、オランダの自由党など極右勢力が政権を脅かす存在になり、オーストリアでは2017年12月に右派連立政権が発足している。

 さらにポーランド、ハンガリーなど旧東欧圏には、EU批判が公然化している。EU離脱論は聞かれないが、難民受け入れなどをめぐって、ドイツなど主要国との食い違いは大きくなっている。

 それだけに、ユーロ圏経済第3位のイタリアの政治混乱の衝撃は大きい。ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領の独仏連携がEU再生にどこまで指導力を発揮できるかが試されることになる。

BREXITの混乱で離脱ドミノ起きず

 しかし、どんなイタリア政権であれ、EU批判の声を高めても、EU離脱やユーロ離脱に動く可能性はないだろう。五つ星運動が3月の総選挙で第1党になったのは、当初主張していたユーロ離脱を引っ込めて有権者に安心感が広がったことも大きかった。EUからイタリアが受ける大きな恩恵を考えれば、EU批判とEU離脱は別物であるのはすぐわかる。