2つの「大結合」を

 英米発の「自国第一主義」が世界経済をリスクにさらすのに加えて、潜在力の高いユーラシア地域でも「中国第一主義」が定着すれば、世界経済は混迷の度を深めることになる。こうした事態を防ぐには、「自国第一主義」を超えて、2つの「大結合」が求められる。

 第1には、TPPと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の結合である。TPPはトランプ米政権の離脱で11カ国になり、変質を余儀なくされているが、日本が主張するようにTPP11でも成立をめざすべきである。

 しかし、それだけでは済まない。より大きな潜在力のあるRCEPとの結合こそ肝心である。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に、日中韓、オーストラリア、ニュージーランド、インドの16カ国によるRCEPは「中国主導」と受け取られがちだが、もともと日本が提唱した構想である。RCEPはTPPの進展にらみもあり、交渉があまり進んでいないのも事実である。ここはTPP11にこだわるのではなく、TPPとRCEPの結合という大戦略を打ち出すべきだ。そうして初めて2国間主義に傾斜するトランプ米政権をアジア太平洋という広範な地域主義の場に引き戻すことができるだろう。

 第2に、AIIBとアジア開発銀行(ADB)の結合である。中国主導のAIIBは「一帯一路」構想と連動する国際金融機関である。戦後の国際通貨基金(IMF)・世界銀行体制への挑戦状といえる。EU諸国の参加を尻目に、米国と日本は参加に慎重姿勢を崩していない。しかし、参加国は70カ国を超えている。透明性の向上など運営に注文をつけるだけでなく、日米は共同で参加し、みずから改革を先導すべきだ。中国も金融、投資のノウハウのある日米に参加を強く求めている。

 それだけにとどめるべきではない。機能が重複するADBとの統合をめざすことだ。ADBは創設以来、日本から総裁を送り込んでいるが、AIIBとADBが統合できれば、日中が交互に総裁をつとめることができる。米国はIMFのように副総裁で支える立場だろう。本部は日中以外のアジアに置けばいい。

 この2つの「大結合」は、アジア太平洋の見取り図を大きく変えるはずだ。習近平主席はアジア太平洋に「EU」を建設することを目標にしているが、EUをめざすなら、「覇権国家」の目標を捨てるしかない。2つの「大結合」によって、中国の地域覇権国家としての色合いが薄まるはずである。

カギ握る日本の役割

 2つの「大結合」を通じてアジア太平洋を発展させ安定させるうえで、日本の役割は決定的に重要である。「一帯一路」会議には、中国に近いとされる二階俊博自民党幹事長が出席した。二階氏は習近平主席とも会談し、日中首脳の相互訪問を提唱している。近隣どうしの首脳が頻繁に会談することは当然である。米中、日米のような定例の閣僚会議を設け、経済や安全保障を率直に語り合うことだ。間違っても「中国主導」に対抗して、「中国包囲網」を築こうなどと考えるべきではない。

 TPPとRCEPの結合は、両方に加わる日本が「扇の要」の役割を果たして初めて実現する。アジアのインフラ投資に実績と経験をもつ日本は、AIIBとADBの結合を提唱すべき立場にいる。「中国第一主義」が動き出そうとしているとき、日本に求められるのは、狭量な対抗意識を捨て、アジア太平洋全体を視野に入れた構想力と実践力を持つことである。