それは「一帯一路」構想への協力姿勢といえる。核、ミサイル開発で強硬姿勢を崩さない北朝鮮に対応するには、中国の指導力に期待するしかなく、米中関係を融和せざるを得ないという事情がある。

 対米貿易黒字が大きい中国を「為替操作国」に認定するのを見送るのもその流れである。その一方で、中国は米国からの牛肉輸入を再開する譲歩をみせた。「北朝鮮」という北東アジアを揺るがす危険を前に、米中も歩み寄らざるをえなかったのである。

インドの反発―きしむ「中国主導」

 中国主導のこの「一帯一路」構想に米国の協力が得られたからといって、この構想が順調に進む保証はない。米国の協力姿勢は「消極的支持」にとどまっている。それどころか、中国と並ぶアジアの新興大国であるインドが国際会議への参加を見送ったのである。「国家主権と領土保全のへの懸念を無視した計画を受け入れる国はない」とインドは国際会議への参加を明確に拒否した。

 パキスタンと領有権をめぐってあつれきがあるカシミール地方が「一帯一路」の事業に含まれているためだ。さらに、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカなどにも出資を通じて港湾施設を建設し、シーレーン(海上輸送路)を獲得しようとしている。「一帯一路」構想が「真珠の首飾り」と呼ばれる中国によるインド包囲網の形成につながることに、黙ってはいられないのである。

 アジアの巨大新興国どうし、中印の経済交流は活発だが、中国が安全保障も視野に入れて「一帯一路」構想を続けるかぎり、中印関係の冷却化は避けられないだろう。それはアジアの安定を損なう危険もある。

欧州にも警戒感

 「一帯一路」構想の西側の到達点である欧州連合(EU)にも警戒感はある。EUは今後の経済成長のために、中国との連携を重視している。EUが極右ポピュリズム(大衆迎合主義)勢力を封じ込めるには、新たな成長機会を獲得して、域内の雇用を拡大するしかない。高成長から中成長になっているとはいえ、中国経済の成長力はなお頼みの綱である。EU各国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)にこぞって参加したのも、中国経済の発展に照準を合わせているからだ。

 そのEU諸国も「一帯一路」構想で中国流の「国家資本主義」が広がることには、批判が強い。その証拠に、国際会議の貿易分科会に参加したドイツなどは、物資調達の透明性や環境基準の問題点などあげて、合意文書を支持しなかった。

 「一帯一路」の沿線国は中国の資金で発展が促されることを基本的には歓迎している。しかし、資金返済が滞れば、港湾の権限移譲を求められる例もあり、行き過ぎた中国偏重に不満も高まっている。