その一方で、英独仏は米抜きでもイラン核合意を継続する方針だ。米国には「米以外の当事国が核合意を履行するのを妨げないように」とクギをさす一方で、イランには「引き続き核合意の義務を果たすべきだ」と念押しした。

 トランプ大統領の登場で米欧関係はきしみ続けているが、イラン核合意からの離脱で亀裂は決定的になった。欧州連合(EU)首脳はトランプ大統領による鉄鋼、アルミニウムの輸入制限など保護主義路線を強く警告し、対抗措置も辞さない姿勢を取ってきた。地球温暖化防止のためのパリ協定からの離脱を真っ向から批判してきている。そのうえに、イラン核合意からの離脱である。オバマ前政権と連携し合意にこぎつけただけに、国際合意の放棄に苦り切っている。

 米国と英独仏との「全面対立」は冷戦終結後初めてといっていい。ブッシュ政権によるイラク戦争では英国が参加し、仏独は不参加と欧州内で濃淡があったが、今回は英独仏が足並みをそろえている。米欧同盟は大きな転機を迎えている。それにロシア、中国も加わっているだけに、「米国の孤立」が鮮明になっている。

経済制裁再開で原油高も

 トランプ大統領は「最大の経済制裁を科す」と表明している。原油取引を制限してイラン経済を揺さぶるのが狙いだ。制裁の内容によって90日か180日の猶予期間を経て発動される。11月の中間選挙に照準を合わせているのは明らかだ。

 イラン中央銀行と取引する海外の金融機関は、米国の金融機関と取引できなくなる。自国の金融機関を「適用除外」にするには、イランからの原油輸入の大幅削減が条件になる見通しだ。

 米国が経済制裁を再開しても、欧州勢がそれを補う可能性もある。その一方で、米制裁に、エアバスなど欧州企業なども巻きこまれる恐れがある。経済制裁の深度によっては、イランの原油輸出に影響が出るのは避けられないだろう。

 イラン原油は大半がアジア諸国向けだけに、アジア経済への影響は無視できない。世界第4位の産油国の原油輸出減は、原油価格上昇に跳ね返る。すでにニューヨークの原油先物市場では1バレル70ドル台に上昇している。中東情勢の緊張による原油価格上昇が世界経済の波乱要因になる恐れもある。

北朝鮮への2重のメッセージ

 トランプ大統領のイラン核合意からの離脱は、米朝首脳会談を前にして北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に少なからず影響を及ぼすだろう。ひとつは「不完全な合意なら合意しない」というトランプ大統領の強硬姿勢であり、もうひとつはトランプ第一で、合意しても破棄はあるというものである。いわば「2重のメッセージ」である。

 トランプ政権は、イラン核合意からの離脱を北朝鮮への断固たるメッセージと位置付けている。ボルトン大統領補佐官は「米国は不適切な取引はしないという明確なサインを送った」と離脱の意義を強調した。

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