「EUの新しいリーダー」への期待

 マクロン新大統領に期待されるのは「EUの新しいリーダー」である。求心力を失いつつあるEUを立て直す推進役になることが求められている。大統領選でマクロン氏はEU統合に積極的な提案が目立つ。これは反EUのルペン氏との違いを際立たせるだけではないだろう。

 とりわけEUの核にあるユーロの再生に、大きく踏み込んでいるのが特徴だ。金融政策は1本でも財政は別々というユーロの構造的欠陥を是正しようというものだ。そのためにユーロ加盟19カ国の統合を深め、共通予算やユーロ圏議会を創設するという。かつてピサニフェリー氏が提唱していた「ユーロ共同債」構想をさらに進める大構想である。

 もちろん、これには「ユーロ共同債」構想にも慎重だったドイツが反対する公算がある。財政主権の共有化に抵抗感のある加盟国も多いだろう。急進改革には反発も予想されるが、停滞するEUを前に進めるうえで、大きな「希望」になる可能性はある。

BREXITに大きな壁

 マクロン新大統領の登場に、テリーザ・メイ英首相は歓迎の姿勢を示しているが、内心はおだやかではないだろう。マクロン氏はEU離脱後の英国の単一市場アクセスには否定的な立場を鮮明にしているからだ。メルケル首相と同様、英国に対して「いいとこ取りは許さない」という態度である。ユンケルEU委員長らブリュッセルのEU首脳と並ぶ対英「ハードライナー」になる可能性がある。

 ロンドン・シティーにあるユーロの決済機能などをパリに移転し、欧州大陸の金融センターとしての機能を高めることをめざすだろう。シティーをよりどころにする英国としては手ごわいライバルに浮上するはずだ。

G7の「経済リーダー」に

 マクロン氏は、メルケル首相の影に隠れていたオランド大統領とは打って変わって国際的リーダーになれる資質を持っている。流暢な英語力は武器になる。とくにG7ではその経済センスを生かして「経済リーダー」になれる可能性がある。リーマンショック後の世界経済危機を救ったのは、経済感覚が優れたブラウン英首相の矢継ぎ早の政策発動とG7の国際協調だった。

 世界経済はいま平穏だが、この5年間でいつ危機に見舞われても不思議ではない。マクロン新大統領は、第1次石油危機後の世界経済を見事に運営したジスカールデスタン大統領のような危機管理能力が期待される。