米ロ中という核保有国が核軍拡競争に走る一方で、「朝鮮半島の完全な非核化」をめざすというのは大きな矛盾である。唯一の被爆国として日本は、自ら核兵器禁止条約に加盟するとともに、核軍拡を防ぎ、核軍縮交渉を加速させるよう米ロ中を説得する責務がある。「核兵器なき世界」に向けて、核軍縮交渉が大きく進展しないかぎり、地球上に核保有をめざす危険な国家や過激集団が登場する悪夢にさいなまれることになる。

G20首脳を広島に招け

 「核兵器なき世界」を呼び掛けたオバマ前大統領は2016年、広島を訪問した。安倍晋三首相のハワイ・真珠湾訪問とあわせて、日米友好は高められたが、米国の原爆投下に責任を感じるオバマ氏の広島訪問は地球、人類にとっても大きな意義をもっていた。

 主要20カ国・地域(G20)サミットは2019年6月に大阪で開かれる。足を延ばせば、すぐに広島である。お定まりの議論を繰り返すより、G20首脳を広島に招いてはどうか。第2次大戦後、核兵器が一度も使用されなかったのは、核兵器が人類にいかに悲惨な結果をもたらすか、広島、長崎から発信し続けたからである。広島訪問に拒否反応を示す首脳がいるとすれば、その首脳は「核兵器なき世界」への道にそむくことが証明される。

地球の将来に視野を広げよ

 安倍外交は「地球を俯瞰する外交」という旗印を掲げながら、北朝鮮の核危機という肝心なところで「蚊帳の外」に置かれてしまった。保護主義、排外主義で国際批判を浴びるトランプ米政権に過度に依存したツケは大きい。北朝鮮に大きな影響力をもつ中国と北朝鮮の同胞として融和に傾斜する韓国との関係を改善できなかったことも響いている。朝鮮半島をめぐる国際政治力学を俯瞰していなかったのである。

 「朝鮮半島の完全な非核化」が実現するまで、米国とともに圧力をかけ続けるのはいいが、それだけではすまない。朝鮮半島非核化は「核兵器なき世界」にとって重要な一歩ではあるが、まだ「第1幕」にすぎない。朝鮮半島非核化を「核兵器なき世界」にどうつなげるか、その道標を示すのは、唯一の被爆国・日本の責任である。地球の将来に視野を広げて初めて、「朝鮮半島の完全な非核化」も確かなものになる。

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