安倍一強政治を担ってきたのは、「経済産業省内閣」と呼ばれる霞が関の経産省シフトである。首相周辺を固めるのは、経産官僚ばかりである。おかげで霞が関の中心にいたはずの財務省の影をすっかり薄くなった。財務省をめぐる不祥事からは、追い込まれた財務官僚のあせりが見て取れる。
「経産省内閣」の成長無策
問題は、その「経産省内閣」が政策の失敗を繰り返していることだ。アベノミクスはデフレ脱却のため出だしは、それなりに意味はあったが、財政、金融のリフレ政策に傾斜しすぎて、成長戦略がおろそかになった。世界の潮流であるデジタル革命は米国の新興企業が先行し、それを中国、欧州勢が追走する展開だ。日本企業の出遅れは顕著である。人口知能(AI)など先端分野での立ち遅れも深刻だ。成長戦略は起動していない。
エネルギー戦略でも、世界の主流になりつつある再生可能エネルギー開発の遅れが目立つ。先行する欧州はもちろん、アジア各国に比べても遅れている。いまなお石炭火力に依存するようでは、「環境後進国」のレッテルを張られる。「経産省内閣」の失策は明らかだ。
日本がいつまでもリフレ政策から出口に動けないのは深刻である。このままでは、日本経済の将来に大きな重荷になるだろう。世界がリーマンショック後の金融緩和からの出口戦略を打ち出しているときに、黒田日銀は超緩和を継続する姿勢を変えようとしない。国債の大量購入による事実上の「財政ファイナンス」を続けている。おかげで、財政規律は緩むばかりである。
本来、短期目標である基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化はいつまでたっても達成できず、長期債務残高の国内総生産(GDP)比は2倍を超え、先進国最悪である。それだけで、財務省幹部は責任を問われる。にもかかわらず、だれ一人、リフレ政策の継続に抵抗してこなかった。
日本をおおう財政、金融の「複合リスク」こそ最も深刻な「安倍リスク」といえる。
「地球の敵」とは距離を
「魚は頭から腐る」はロシアのことわざである。世界にはびこる強権政治にその傾向はあるが、最も顕著なのは、日米だろう。その日米がいびつな「蜜月」関係を続けることこそ、世界リスクである。
少なくとも安倍首相は、トランプ大統領との距離を保つことだ。日米首脳会談で貿易をめぐって、きしみが生じたのはむしろ良い機会だろう。反保護主義を改めて鮮明にするとともに、地球温暖化防止のためのパリ協定への復帰を求めることである。「地球の敵」との蜜月は恥ずべきことだ。トランプ大統領の距離をどう保つか、世界はそれを見守っている。
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