トランプ大統領の「口先介入」は一連の介入主義の一環といえる。自動車など個別企業への強制介入、移民規制などの大統領令をくつがえす司法への介入、そしてトランプ政権の排外主義に反対する主要メディアへの介入などである。とりわけ、統制色の濃いトランプ流「国家資本主義」を反映している。それだけに根は深く、大統領の口先介入は世界の外為市場の大きな波乱要因になるだろう。

プラザ合意とは程遠い単独主義

 トランプ大統領がめざす「ドル高是正」を「新プラザ合意」構想とみる向きもある。筆者は1985年9月22日、ニューヨークのプラザ・ホテルで日本経済新聞ニューヨーク支局長として、この歴史的通貨合意に立ち会った。その経験からいえるのは、「プラザ合意」はトランプ流介入主義とはまるで違うという点だ。

 第1に、1985年秋の段階でドル相場は1ドル=240円という「超ドル高」だった。最近のドル相場は14年ぶりの高値圏というが、プラザ合意前の超ドル高とは比べようもない。あの当時、行き過ぎたドル高の是正は、米国だけでなく日欧も含めどの国にとっても必要な選択だった。

 第2に、プラザ合意が日米欧の国際協調によるのに対して、トランプ大統領の介入は単独主義である点だ。プラザ合意によるドル売りの協調介入はサプライズを伴い大きな効果をもたらした。一方で超ドル高を是正するために米連邦準備理事会(FRB)が単独利下げに踏み切れば、「ドル暴落」の危険があったのも事実である。それを防ぐためにG5(先進5カ国)の協調利下げが実施された。この国際協調の枠組みこそプラザ合意の特質である。

 第3に、プラザ合意は冷戦終結への経済戦略だった面もある。高金利、ドル高の是正は、財政と貿易の双子の赤字の削減につながる。それはソ連との軍拡競争に歯止めをかけ、冷戦終結を経済面から誘導する効果をもたらした。

 日米欧の国際協調にもとづくプラザ合意には冷戦終結に向けての大きな戦略と構想が埋め込まれていた。場当たり的なトランプ主義との差はそこにある。

日米のズレ鮮明に

 国際協調など念頭にないトランプ政権だが、最も近い同盟関係にあるはずの日米間の経済をめぐる開きは大きい。麻生副総理・財務相とペンス米副大統領との日米経済対話は、日米間の大きなズレをみせつけた。日米主導で自由貿易のルールをアジア全域でつくろうという麻生副総理に対して、ペンス副大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)を過去のものだとし、二国間主義を鮮明にした。米国第一主義のためには、マルチではなくバイでいくという姿勢である。

 ペンス副大統領は、日米FTA(自由貿易協定)締結の可能性にも言及している。農業、自動車など個別問題で二国間主義に傾斜すれば、「貿易摩擦の時代」に時計の針を30年以上、逆戻りさせなければならなくなる。