
英国は3月29日、欧州連合(EU)離脱を正式に通知した。2年間の予定で離脱交渉が動き出す。スポーツに例えるなら、EUで愛され世界的なスポーツであるサッカーより、英連邦で普及する英国流のクリケットを英国は選んだのである。
ポピュリズム(大衆迎合主義)を背景にしたBREXIT(英国のEU離脱)は今後、世界を揺さぶるだろう。なによりEUと外資に依存してきた英国経済にとって、BREXITは非合理な選択であり、「新英国病」の危険をはらんでいる。
大英帝国の幻想再び
クリケットは英国や英連邦では伝統的で人気のあるスポーツである。世界100カ国以上で楽しまれているという。野球の原型ともいわれるが、日本人にはなじみは薄い。なにしろ長時間かかるから、テレビ観戦向きではない。オリンピックには20世紀のはじめに1度採用されただけで、姿を消している。世界的なスポーツであるサッカーに比べると、英国色の濃い特異な存在といわざるをえない。
BREXITは英国がサッカー(コモン・マーケット)からクリケット(コモン・ウエルス=英連邦)に逆戻りすることを意味する。英国が欧州統合の原点である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)に加わらず、EUの前身である欧州経済共同体(EEC)にも参加しなかったのは、英連邦の存在があったからだった。英国にとって「欧州」は貿易関係が深い英連邦、そして米英関係に続く第3順位だった。「欧州合衆国」構想を提起したチャーチル首相も欧州について「With not in」(共にであり、中にではない)と述べている。
そこにはかつての覇権国である大英帝国の幻想があった。第2次大戦中のヤルタ会談以来、3大強国(米英ソ)という意識が抜けなかった。欧州統合の父、ジャン・モネは「部外にて英国は大国の幻想に満足していた」と痛烈に皮肉っている。
この大英帝国の幻想がBREXITで再び頭をもたげたのだろう。
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