ブリュッセルのシンクタンク、ブリューゲルのガントラム・ウルフ所長は「ルペン氏とマクロン前経済相(無所属の中道派)の争いになるが、決戦ではマクロン氏が勝利する」と読む。当初、最有力とみられていた共和党のフィヨン候補は妻の給与をめぐる疑惑で後退を余儀なくされている。

 マクロン氏は30歳台と若く行政経験も乏しいが、そこに不安はないとウルフ氏は指摘する。「私の前任の所長、ピサニフェリー・パリ大教授が経済顧問に就いているのが大きい」とみる。ピサニフェリー氏はユーロ危機などでも幅広く提言したバランス感覚あるエコノミストだ。ユーロ共同債の発行などで欧州統合を前進させる必要があることをかつて筆者に語っていた。マクロン大統領が誕生すれば、重要ポストに就く可能性があるという。

 秋のドイツの総選挙では、4期目をめざすメルケル首相と社民党のシュルツ前欧州議会議長の争いになる。ここに右派勢力の「ドイツのための選択肢」が割って入る可能性はほとんどない。メルケル、シュルツ氏とも筋金入りの欧州主義者だけに、EU運営にはプラス材料だろう。

 EUの盟主であるメルケル首相が敗れると今後のEUへの不安が高まる可能性もあるが、シュルツ・マクロンという新しい独仏連携が実現すれば、財政規律最優先から成長重視への転換点になるという見方もある。

「ローマの松」のごとく

 仏独の選挙結果がどうあれ、欧州に浸透した反EUのポピュリズムは簡単には消え去らないだろう。ポピュリズムが危険なのは、知らず知らずのうちに人々の心に入り込むことだ。ローマ法王がEU首脳に警告したように、EUが将来に備えられなければ退化するだけだ。EUはしばらく反EU機運のなかで憂鬱な時代を続けるだろう。

 しかし、危機をバネに再結束に立ち上がるのがEUの歴史でもある。イタリアの作曲家・レスピーギが交響詩に描いた「ローマの松」のごとく、長く大地に根を張るはずである。