欧州連合(EU)の原点であるローマ条約の調印から60年が経った。この3月25日に、ローマ条約に調印したローマのカピトリーノの丘(capitoline hill)でEU特別首脳会議が開催され、英国離脱後のEUの将来像を示すローマ宣言が採択された。参加したのは、英国のメイ首相を除く27カ国の首脳たちである。ローマ条約調印時の6カ国に比べると加盟国は大幅に増え、ユーロ創造など統合は深化した。しかし、いまEUは創設以来の最大の危機に直面している。EUは分裂に向かうのか。それとも再結束に踏み出せるか。節目となる60年後のローマ会議はEU首脳たちにとって「ローマの休日」には程遠かった。

3月25日、ローマ条約の60周年を記念するEU特別首脳会議に出席した欧州各国の首脳ら。(写真:ZUMA Press/amanaimages)

「欧州合衆国」構想の夢と現実

 その日、ローマはまるで初夏のような気候だった。冬支度のまま会議場への坂道を上るのはやや難儀だった。ようやくたどりついても、記者へのセキュリティ・チェックは厳重だった。ちょうど1年前、ブリュッセル空港や地下鉄でテロが起き、こんどはロンドンの議事堂前でもテロが起きたばかりだ。緊迫した雰囲気のなかで開かれたEU首脳会議だが、欧州統合に歴史的な一歩を踏み出したローマ条約調印のような昂揚感は感じられなかった。

 60年前のローマ条約に参加したのは、フランス、西独、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6カ国である。原加盟国と呼ばれる。第2次大戦後の仏独和解を背景にした欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立に続いて、EEC(欧州経済共同体)を軸に欧州統合を幅広く押し進めるのが狙いだった。そこには、欧州統合の父、ジャン・モネの「欧州合衆国」の夢が反映されていた。

 そんな戦後の欧州統合の機運は、ウィリアム・ワイラー監督の米国映画「ローマの休日」(1953年製作)にも映し出されている。オードリー・ヘップバーン演じる王女が記者団を前に欧州統合について語る最後のシーンは印象深い。記者が「欧州の連邦化は経済問題の解決策だと思いますか」と質問すると、「欧州の一致団結を促すなら、どんな政策も歓迎します」と答える。別の記者が「国家と国家の友好は保たれているでしょうか」と聞くと、「そう信じます。人と人との友情を信じるように」と語る。