難航必至のBREXIT交渉

 BREXITまであと1年を切った。移行期間も2020年末で設定された。この間に、EUとの間で自由貿易協定(FTA)を希望通りで合意できるか不透明だ。メイ英首相はカナダ以上の「特別なパートナーシップ」を求めているが、EU首脳は「いいとこ取りは許さない」(メルケル独首相)という姿勢で一致している。金融を含める特別扱いは認めない方針だ。

 難航するアイルランドと北アイルランドの国境問題の調整がこじれれば、「英国の分裂」につながる恐れもある。スコットランドは独立の動きを強め、ロンドンにも独立機運が高まるかもしれない。アイルランドと北アイルランドの統合論議も起きるだろう。それこそ「グレート・ブリテン」が「リトル・イングランド」になりかねない。

 BREXIT交渉に不透明感が広がれば、EU市場を目当てに英国に進出している外資は英国からドイツなど欧州大陸へ移転に動かざるをえない。米国の金融機関の動きは活発で、日本勢も後追いするだろう。問題はどの程度の規模とテンポで英国離れが起きるかである。それしだいでは国際金融センターとしてのロンドン・シティーの座も盤石ではなくなる。

 EUと外資に依存してきた英国経済への打撃は避けられない。外資流出が続けば、ポンド安を超えてポンド危機を招きかねない。そうなれば、「新英国病」に陥る恐れが出てくる。

「英国の時代」の終焉か

 この333年、欧州は2度の世界大戦を含めて何度も地図が塗り替えられてきた。しかし、最大の塗り替えは、主権国家時代のウエストファリア体制から、第2次大戦後のEUの創設だろう。主権国家を超えた、主権の共有、さらには超国家の試みである。それは2度と欧州で戦争を起こさないために「平和の組織」を創設する試みである。そのEUに対して、英国は国家主義を振りかざして挑戦してきたのである。それは、歴史に逆行するものだといわざるをえない。BREXITで変わる欧州地図は、英国を小さな島国として位置付けるだろう。

 賢明な英国人が「引き返す勇気」を持たない限り、3世紀に渡り続いた「英国の時代」は終焉のときを迎える。それを悲しむのは地下に眠るヘンデルばかりではないはずだ。