功を奏した硬軟両様のEU戦略

 欧州連合(EU)が北米自由貿易協定(NAFTA)見直し交渉中のカナダ、メキシコなどとともに、鉄鋼、アルミの輸入制限で「適用除外」を獲得したのは、「圧力」と「融和」の硬軟両様の通商戦略が功を奏したからだろう。トランプ大統領の輸入制限に真っ先にかみつき、共和、民主両党幹部のおひざ元の製品に対抗関税を課すと表明したのはユンケル欧州委員長だった。EUの盟主でトランプ嫌いのメルケル独首相が政権に「復帰」するやいなや、対抗関税でトランプ保護主義に警告したのも効いた。米国の巨大情報技術(IT)企業に照準を合わせたEUのデジタル課税構想も無視できなかったはずだ。

 その一方で、EUは通商担当のマルムストローム欧州委員が適用除外を働きかけるとともに、トゥスク大統領が中断している米国との自由貿易協定(TTIP)の再開を求めるなど融和路線の構えもみせた。

 EUを適用除外にするうえでは、安全保障面の配慮も働いたはずだ。ロシアでプーチン大統領が再選され、強権化が予想されるなかで、北大西洋条約機構(NATO)の米欧同盟まで揺るがすわけにはいかなかったのだろう。

「ノーと言える日本」に戻れ

 巧みなEUの通商戦略に比べて、トランプ保護主義に対する日本の対応は、あまりにお粗末だった。保護主義を真っ向から批判するより先に、適用除外をひたすら願い出たのは情けなかった。繊維、カラーテレビ、自動車、半導体など何度も日米通商摩擦を経験し、2国間の保護主義がいかに不毛なものであるかわかっているはずの日本がなぜ正々堂々とトランプ保護主義に「ノー」を突きつけなかったのか。

 北朝鮮問題もあり、トランプ政権との関係を重視するのはわかるが、世界経済全体を大きく揺さぶる覇権国の保護主義に、真正面から切り込めないとすれば、それこそまともな同盟国とはいえない。

 しかも、同盟国としての「適用除外」のお願いは無視される結果になった。そのせいか、世界同時株安のなかでも日本株の下げは最も大きい。安倍晋三首相はトランプ大統領を最も親しい関係と位置付けているかもしれないが、トランプ大統領の方は何でも通る「安全パイ」としか考えていないのではないか。

 トランプ保護主義には「ノーと言える日本」に戻るしかない。EUのように、はっきり物申さないかぎり、通商戦略は成り立たない。

 まず、トランプ政権が求める2国間の自由貿易協定(FTA)は受け入れるべきではない。2国間で貿易不均衡を是正する考え方自体が誤っていることを説くしかない。何より環太平洋経済連携協定(TPP)への米国復帰を優先すべきである。

 そのうえで、中国が加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)とTPPを結合することだ。それは「米中貿易戦争」に終止符を打つ近道でもある。TPPにもRCEPにも足場を置く日本の役割は極めて大きい。トランプ保護主義を逆手に取って、日本が歴史的使命を果たす番である。