トランプ米大統領は「貿易戦争、いいじゃないか。簡単に勝てる」などを公言しているが…(写真:ロイター/アフロ)

 米中貿易戦争を仕掛け、輸入制限を強行したトランプ米大統領の暴走が世界経済を巻き込んでいる。国際協調派の相次ぐ辞任でブレーキ役を失ったトランプ保護主義は歯止めがきかない。それは世界同時株安に直結した。1930年代、米国発の保護主義で始まった世界大不況を連想させる。トランプ大統領は貿易戦争に勝てると公言するが、最大の敗者が覇権国の威信を失墜した米国であることは間違いない。トランプ大統領にひたすら追随してきた日本への打撃も大きい。ひたすら輸入制限の例外扱いを希うのではなく、自由貿易の原点に立ち「ノーと言える日本」に戻り、国際社会の結束をめざさない限り、トランプ暴走は止められないだろう。

よぎる1930年代の悪夢

 トランプ大統領は鉄鋼、アルミニウムにそれぞれ25%、10%の高関税を課す輸入制限措置を打ち出したが、それだけでは済まなかった。中国の知的財産権の侵害を理由に、5000億ドル相当の輸入品の約1割に高関税を課す方針を打ち出した。情報通信機器や機械など約1300品目を対象に25%の関税を課す。大統領権限で強力な貿易制限をかける「通商法301条」をたてにした措置である。中国企業の対米投資も制限する。

 これを受けて、中国も鉄鋼、アルミの輸入制限に対抗して、最高25%の関税を上乗せする報復措置を打ち出した。果物、ナッツ、継ぎ目のない鋼管など120品目に15%、豚肉、アルミ・スクラップなど8品目に25%の関税を上乗せする。さらに、米国産大豆などで対中制裁への対抗措置を検討している。全面的な「米中貿易戦争」の様相が濃くなっている。

 トランプ発の貿易戦争は世界同時株安に波及した。こうした状況は、1930年代の世界大不況を思わせる。1929年のニューヨーク株暴落を受けて、1930年、米国はスムート・ホーレイ関税法を制定、世界に関税引き上げなど保護主義が連鎖する。通貨切り下げ競争と相まって世界貿易は縮小し、世界大不況につながる。それがヒットラーはじめ極右政権の台頭を許し、第2次大戦への導火線になったのである。