「4番最強」か「2番最強」か。野球文化の違いもあり、どちらが正しいとも断言できないが、「4番最強」にこだわる日本野球が世界の常識でないことはたしかだろう。コンピューターによる計算では、強打者の順に1番から並べるのが得点力としてはもっとも高いとされる。

 ちなみに、今回のWBCでドミニカ共和国は、先述のロビンソン・カノ選手が2番に座る予定である。強打者ぞろいのドミニカ共和国だから、カノ選手が2番に回るのではなく、最強打者だから2番を任せるということだろう。

野球に国境はない

 WBCは国・地域別対抗である。それが健全なナショナリズムの発露なら問題はない。しかし、世界に蔓延している「狭量なナショナリズム」を刺激することになれば、大きな問題である。

 米国でドナルド・トランプ大統領が誕生したことは、移民国家、多民族国家である米国の社会を大きく揺さぶっていている。移民排斥、難民受け入れ停止、人種差別など極端な排外主義を掲げ、大統領令を通じてそれを実践しようとしたトランプ大統領に対して、世界中で抗議活動が広がった。トランプ大統領の登場は、政治の季節にある欧州の極右ポピュリズムを一層刺激している。排外主義の動きが欧州に連鎖すれば、第2次大戦後、さらに冷戦終結後に進化した民主主義は危機にさらされることになる。

 サッカーのワールドカップほどではないにしても、世界共通のスポーツ文化になった野球の世界大会・WBCは、こうした危険な兆候を克服する絶好の機会になる。国・地域別対抗とはいっても、各チームには米大リーグをはじめ様々な野球文化を身に着けた選手が集っている。

 WBCでは侍ジャパンに勝ち進んでもらいたいのは当然だが、侍ジャパンの応援に終始するだけではさみしい。日本流とは違う多様な野球文化に触れるのも大きな楽しみだろう。

 そして何よりトランプ大統領が建設するとしている「国境の壁」を野球文化を通じて取り払うことである。偏狭なナショナリズムを超えて「野球に国境はない」ことを改めて確認する機会にしたいものだ。