とくに、この構想が東シナ海、南シナ海からインド洋に広がる中国の海洋進出にからんでいるところに大きな問題がある。習近平国家主席は「海洋強国」をめざす方針を鮮明にしている。海外港湾30カ所の整備計画を打ち出しているが、情勢次第で軍事転用する構えである。
こうした習近平路線がめざすのは「中華覇権」だろう。それは「海洋強国」として米国の覇権に挑戦しようとするものである。もちろん、そこには大きな矛盾がある。「海洋強国」と「人民元の国際通貨化」は相容れない。強権国家に、国際通貨の信認は得られないからだ。中国経済が「国家資本主義」のまま拡大することになれば、国際社会とのあつれきは深まるばかりだろう。
プーチン流拡張主義
ロシアのプーチン大統領は3月の大統領選挙で「圧勝」するとみられている。2024年までの権力を掌握することになる。2000年以来、一貫して権力の座にあり続けることになる。この権力集中によって強権化がさらに進むはずだ。
プーチン大統領はウクライナのクリミア併合、ウクライナ東部への介入などウクライナ危機を引き起こした。ウクライナの米欧接近に危機感を強めたためだが、国内の強固な基盤が介入に踏み切らせた。
さらに、欧州連合(EU)内の北欧諸国もロシアへの警戒を強めている。バルト3国だけでなく、スウェーデンやフィンランドでもロシアの拡張路線に警戒感が強く、北大西洋条約機構(NATO)への加盟も課題に浮上している。そうなれば、ロシアと北欧のあつれきは強まることになりかねない。
プーチン大統領は中東でもパワーの空白をついて進出姿勢を取りつづけている。とりわけ戦乱が続くシリアのアサド政権との関係が深く、米欧との溝を深めている。中東危機が複雑化する大きな要因になっている。
問題は、こうした拡張主義をロシアの国内経済が支えられるかである。韓国ほどの経済規模で、資源国にすぎないロシアは経済危機に見舞われる危険がつきまとう。そこが中国との違いである。強権化するプーチン政権のもとでいまは封じ込まれているが、軍事拡張による国内経済のしわ寄せから国内の不満が噴出することも想定される。
エルドアンがもたらした亀裂
トルコのエルドアン大統領も強権化が目立つ。EUへの加盟をめざすイスラム国家として、キリスト教社会とイスラム社会の橋渡し役として、さらには「文明の融合」の担い手として期待されたが、エルドアン大統領の強権化でEUとの亀裂は深刻化してきた。このままでは、EU加盟は頓挫しかねない情勢である。
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