一時的調整か構造的矛盾か

 米株価暴落は一時的調整や構造的調整か市場の見方は分かれるが、米株暴落は、トランプ政策の矛盾が露呈したとみるべきだろう。法人税率引き下げなど大規模減税やインフラ投資による需要刺激は企業収益を押し上げる一方で、景気を過熱させる危険をはらむ。劣勢が予想される11月の中間選挙を前にした大盤振る舞いには不安がつきまとう。それは「適温経済」を超えてインフレ懸念につながる。

 合わせて、大規模減税、インフラ投資、核軍拡というトランプ版「3本の矢」は、財政赤字を拡大させる。

 すべては長期金利の上昇要因につながってくる。それはトランプ政策が抱える構造問題といえる。市場は乱高下を繰り返しながらも、トランプ政策の構造的矛盾をつくことになるだろう。

中央銀行が試される出口戦略

 米株価の暴落は、世界の市場を巻き込んだ。政策協調によって危機の拡散を防ぐのは当然だが、ここで重要なのは、FRBをはじめとする中央銀行が「政治との距離」を保ちながら出口戦略を実行できるかどうかである。

 トランプ大統領はかねて「低金利が好きだ」と公言している。パウエルFRB議長はそのトランプ大統領に任命された「トランプ印」と受け止められている。そのために、もし本来必要な利上げを見送ることになれば、リスクがさらに高まることになる。パウエル議長が大統領とのあつれきを恐れず政策を実行できるかどうかで市場の信認が決まる。それこそが市場の安定につながる。

 FRBに続いて、出口戦略に動き出した欧州中央銀行(ECB)にも課題は多い。今年半ばに資産購入を終了できるか、利上げは来年半ばまで先送りできるかなどである。来年10月に任期満了を迎えるドラギ総裁は後任にタカ派のワイトマン独連銀総裁が浮上する中で、ユーロ危機を打開したときのような「ドラギ・マジック」を発揮できるかどうかである。ECBの場合、FRBとは逆にドイツを中心とする利上げ圧力にどう対応するかが問われるだろう。

日本が抱える複合リスク

 深刻なのは日本である。米国株の暴落を最もまともに受けたのは東京市場だった。東京市場はまるでニューヨーク市場の写真相場だった。そこには、日本が抱える財政と金融の複合リスクがある。

 日本の財政赤字は先進国最悪であり、長期債務残高のGDP比は2.3倍に膨らんでいる。日銀の国債購入を通じて、膨らむ財政赤字がファイナンスされている状況だ。にもかかわらず、安倍晋三政権に危機感は乏しく、大甘である基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標さえ先送りされている。このままで長期金利が上昇に転じれば、財政赤字は雪だるま式に膨らむ。

 黒田東彦総裁は近く任期満了を迎えるが、続投するかどうかは別にして、日銀総裁はこの財政危機について政治に直言できる人物でなければならならない。合わせて出口戦略について議論し、市場に織り込ませることも肝心だろう。

 米国株の暴落は「対岸の火事」ではない。火の粉を払えば済む問題ではない。日本自身が複合リスクを直視すべきことを示唆している。