すでに世界の先頭を切って出口戦略に乗り出しているFRBは、2018年中に3度の利上げを予定しているが、景気好転による物価上昇にはずみがつくようなら、利上げのテンポを速めなければならない。しかし、景気好転の証とはいえ長期金利上昇で市場が混乱するなら、利上げのテンポを緩めることも考えなければならなくなるだろう。エコノミスト出身ではないパウエル議長がこの微妙な舵取りを市場の反応も読みながら実行できるかどうかである。

大規模減税・インフラ投資で財政赤字拡大

 米国経済が好調であるおかげで雇用が拡大し賃金上昇が実現し、それが低位安定を続けてきた長期金利を上昇させたとすれば、「良い金利上昇」である。「健全な経済」の循環だといえる。むしろ景気が良くても長期金利がいつまでたっても上がらず、それが株高を招いてきたとすれば、その方が「いびつな経済」といえる。

 しかし、長期金利上昇が経済の好循環とは別の要因によってもたらされているとすれば、話は別である。トランプ政権が打ち出す経済戦略が米国に巨額の財政赤字を積み残すことが懸念される。巨額の財政赤字が長期金利上昇の背景にあるとすれば、「悪い金利上昇」というしかない。

 法人減税など大規模減税を柱とするトランプ税制改革によって、連邦政府債務は10年間に1兆ドル積み上がる見通しだ。さらにトランプ大統領は1.5兆ドルという戦後最大のインフラ投資計画を打ち出した。このままでは財政赤字の国内総生産(GDP)比は5%に近づき、連邦債務残高のGDP比は100%を超える恐れが出てきている。これはユーロ圏の問題国並みの危機レベルである。

核軍拡で財政赤字拡大に拍車

 さらに、問題なのはトランプ政権が核軍拡を軸に国防費増大を鮮明にしていることだ。オバマ前大統領が打ち出した「核兵器なき世界」への核軍縮路線を逆転させる危険な選択である。核戦略の指針となる「核体制の見直し」(NPR)は、核兵器の使用条件の緩和など核の役割拡大を打ち出した。爆発力を抑制した小型の核弾頭を開発するなど「使える核兵器」をめざしている。核抑止力を高めるのが狙いだが、トランプ政権の路線転換にロシアや中国は強く反発しており、核軍拡競争が再燃する危険がある。

 このトランプ政権の核軍拡は世界の安全保障環境を危険にさらすだけではなく、ただでさえ危機レベルに近づく米国の財政赤字をさらに拡大させる恐れがある。とくに冷戦期のような核軍拡競争に発展すれば、財政赤字に歯止めがきかなくなる。それは、米国の長期金利上昇を招き、世界の金融、為替市場を混乱させる要因になる。米の核戦略見直しは米株価暴落と連動したとみるべきだろう。