排外主義の連鎖をどう防ぐか

 米国とEUという主要な先進地域に広がる排外主義の連鎖をどう防ぐか。世界各国に広がる排外主義批判の抗議行動は、自由で開かれた民主主義に対する危機感の表れだろう。

 第1に、トランプ政権下で米国が民主主義の基本である三権分立を機能させられるかである。「右翼」支配を防ぐうえで、米議会の役割は決定的に重要だ。民主党の抵抗だけでなく共和党の良識派の発信力が問われる。司法の役割も重い。米連邦地裁はイスラム圏7カ国からの入国を制限する大統領令を差し止めたが、大統領権限に抗して司法が機能を発揮できるかが試される。

 米企業も役割を果たすときだ。入国制限にアップルやスターバックスは反対の声をあげたが、移民の国の企業が一斉に声をあげなければ、米国の活力は失われるだろう。トランプ政権からの攻撃にさらされる米メディアは正念場である。ヘイトスピーチを面白がって取り上げ、トランプ大統領の誕生を許したメディアの責任は重い。主要メディアは社運をかけて言論の自由を実証する責務がある。

 第2に、EUの結束である。ローマ条約60年の今年、EUは再結束に踏み出すときである。2度の世界大戦を受けて創設されたこの平和の組織をこれ以上、危機にさらすべきではない。英国のEU離脱、トランプ政権の誕生で勢いづく極右ポピュリズム勢力と戦うには、再結束に向けてEUの将来ビジョンを打ち出すしかない。EU市民意識が根付いている若者の知恵と行動力を生かすことも肝心だ。

 第3に、自由貿易の恩恵を最も受けてきた日本の役割である。日米同盟は重要だが、それだけではすまない。トランプ政権のイスラム圏7カ国への入国制限に、安倍晋三首相は「ノーコメント」を繰り返したが、それでは責任ある民主国家の首脳とはいえない。排外主義に反対することを鮮明にしたうえで、自由貿易論を展開することだ。

 環太平洋経済連携協定(TPP)はトランプ大統領による離脱で風前の灯だが、このTPPと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を結合すれば、アジア太平洋に自由貿易地帯が築ける。そうして米国の復帰を待つしかない。EUとの経済連携協定の締結は、一層重みを増す。トランプ政権が打ち出す保護貿易、管理貿易を食い止めるには、日本とEUが連携するしかない。

 トランプ流排外主義に、日本も傍観者ではいられない。