ドイツ照準にユーロ安批判を展開
トランプ政権はEUの核にあるユーロをも批判の対象にし始めた。保護主義と通貨介入をかみ合わせる戦略である。トランプ大統領が中国と日本に対して「通貨安誘導」と警告する一方で、国家通商会議トップのピーター・ナバロ氏は「暗黙のドイツ通貨・マルク安が貿易交渉の障害になっている」とユーロ安をけん制した。ユーロをあえて現存しないマルクを呼ぶのは、ユーロがドイツのための通貨であることを強調するためだろう。とくにユーロ危機のおかげでユーロ安が続きドイツの国際競争力が高まったことへの批判である。
トランプ政権は対米貿易黒字の上位3カ国である中国、ドイツ、日本を照準に、貿易戦争・通貨戦争を展開する構えである。日中だけでなく、ドイツを加えたのは、ドイツに圧力をかけることでEU全体を揺さぶろうという作戦なのだろう。

揺らぐ米欧同盟
危険なのは、トランプ政権の反EU姿勢が鮮明になるにつれ、第2次大戦後の国際秩序の基本になってきた米欧同盟が揺らいでいることだ。英国のメイ首相はトランプ大統領との首脳会談で、「時代遅れ」としてきた北大西洋条約機構(NATO)の重要性を100%確認したとしているが、防衛負担をめぐってトランプ政権の批判が和らぐわけではない。
EUを離脱する英国のメイ首相がトランプ政権とEU諸国の橋渡しをしようとすることに対しては、「橋渡しはいらない。米国とはツィッターでコミュニケーションできる」といった皮肉も聞かれる。
米EU関係の冷却化は、主役なき世界をさらに混乱させるだろう。とくにトランプ米政権と欧州極右がともにロシアとの関係修復をめざしているだけに、混迷は一層深まることになる。
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