
ドナルド・トランプ米大統領は最初の1年で、ただでさえ不安定な「主役なき世界」をさらなる混乱に巻き込んだ。その排外主義は欧州に台頭した極右ポピュリズム(大衆迎合主義)と見まがうほどだ。環太平経済連携協定(TPP)離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)見直しなど保護主義・2国間主義を打ち出し、パリ協定からの離脱で「地球の敵」になった。エルサレム首都宣言やイランの核合意批判で、中東危機をあおっている。反イスラムの姿勢は「文明の衝突」を招く危険がある。英国やカナダという最友好国からも批判される有り様だ。そのトランプ大統領に100%の信を置くのは間違いだ。「トランプ批判」こそ真の「親米」なのである。
極右ポピュリズムに通じる排外主義
「米国第一主義」(アメリカ・ファースト)という名のトランプ流排外主義は、欧州に台頭する極右ポピュリズムと通じるものがある。極右のスティーブ・バノン氏は政権を去ったが、大統領本人が排外主義を身をもって実践している。トランプ大統領は欧州の極右ポピュリストと同列視されることを警戒するが、フランス国民戦線のルペン党首やオランダ自由党のウィルダース党首らの反国際主義・自国第一主義と共通項は多い。
むしろ、これら欧州の極右ポピュリストたちが主張を国民に受け入れやすくするよう極端な排外主義を棚上げするなどソフト路線を取っているのに対して、トランプ大統領の言動は、ますますあからさまな差別主義に傾斜している。ハイチやエルサルバドル、アフリカ諸国からの移民を「肥溜めのような国から来た人たち」と侮辱したのは、本音が出たととらえるべきだろう。
なぜ米国の大統領にこうした品格を欠く人物が選ばれたのか。大統領の支持率の低さは戦後最低ではあるが、何と非難されようとトランプ大統領を支持するという強力な基盤があることも事実である。トランプ候補に投票した人の実に82%がまたトランプ氏に投票すると答えた調査もある。中西部の中低所得白人層を中心に、トランプ支持はなお強固だとみておかなければならないだろう。
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